マンション売却でリフォームは必要?売却に関わるリフォームの疑問にプロが答えます

2020.05.20
マンション売却でリフォームは必要?売却に関わるリフォームの疑問にプロが答えます
マンション売却にまつわる質問でよくされるものの一つが、「売るにあたってリフォームはする必要があるか?」というもの。その他にも、たとえば・・・
「売却担当の不動産屋にリフォームをした方がいいと勧められたので迷っている」 「購入時にリフォームをして状態もいいので、高値で売りたい」 「リフォームするのであれば、どの程度が必要?」 「リフォームや修理を買い手に求められたが、応じる必要はある?」
などなど、今回はマンション売却にまつわるリフォームのよくあるお悩みや疑問に、中古マンション売買のプロがお答えします。

①売るためにはリフォームはした方がいい?

Q:「建ってから時間も経っており、水回りなどあちこち古くなってきている。やっぱりリフォームしてから売り出した方がいい?」
築年数が長く経っているマンションであってもリフォームは基本的に必要ありません。中古マンションを購入する方は、自分でリフォームすることを前提で購入する方も多くいます。せっかく売主が費用をかけてリフォームしても、買い手の希望に合わなければ、費用をかけただけ損になってしまうのです。

②リフォームしたら高値で売れる?

Q:「数年前にフルリフォームをしたから、その分のコストも込みで高めに売り出したい」
購入時や購入後にリフォームをしたお客様から、こうしたご相談を受けることもよくあります。ですが、先ほどと同じ理由により、こうした売り出し方は失敗する可能性が高いです。売主としては、
「リフォーム代も込みで高めに売り出そう!」 「リフォーム済みで綺麗なんだから、多少高値でも当然だし売れるはず」
と考えがちなのですが、実際の買い手としては、
「リフォーム代も乗せるくらいならリフォーム前のものを安く買いたかったな・・・」 「そもそも内装は自分たち好みにリフォームしたかったのに・・・」
とプラス要素にならないことが少なくありません。リフォームは使う人の趣味趣向が強く出るところでもあります。売り手にとっての「お気に入りポイント」や「こだわった内装」などは、買い手に響かないことが多いのです。購入後にリフォームする際は、あとで売却時に「付加価値になるから」と考えて費用をかけるのは避けましょう。もちろん、売却価格に上乗せして回収することは期待せず、とにかく自分好みにリフォームしたいということであれば問題ありません。

③リフォームをした方がいい場合&具体的になにをすべきか

ただ、最低限の補修をした方がマンション売却がスムーズにいく場合もあります。たとえば、以下のような不具合がある場合です。
  • 壁紙が剥がれてしまっている
  • ドアの取っ手が壊れている
  • ガラスにヒビが入っている、割れている
  • 障子がやぶれている
  • 床が腐っている
これらはあくまでも「内覧のときの印象を悪くしないため」のもの。 壁紙があまりにも変色している・破れている、など状態が悪い場合は、壁紙を変えるだけでも印象はぐっとよくできます。このとき、壁紙を高いものにする必要はありません。 買主の方で後ほど好みのものに貼り替える可能性もあるので、明るく清潔に見える白い壁紙などに変えられればOKです。また、「水回りだけ行なった方が良い」というアドバイスもたまに見かけますが、水回りも個人の意向が強く反映される部分です。リフォームのパッケージにも幅広いラインナップがあるくらいなので、よほどでない限りはリフォームの必要はありません。リフォームというよりは、あくまでも内覧のときにマイナスの印象を与えないという意味で最低限の手入れをする、と考えましょう。

④リフォームの費用感

Q:「実際にリフォームすると、いくらくらい費用がかかるもの?」
実際には、広さや間取り、状態などマンションごとの条件によるため一概にいくらでできるとはいいづらいものですが、
フルリフォーム(水回り全部取り替え・床張り替え・壁天井壁紙交換など)の場合
  • 1㎡あたり10万円が目安
部分リフォームの場合
  • キッチン交換100万円〜
  • 風呂交換100万円〜
  • 洗面交換30万円〜
  • トイレ交換30万円〜
  • 床張り替えは工法・材料・施工範囲によって価格の変動が大きいが、1㎡2万円程度(あくまでも本当に大まかな目安)
  • 壁紙は70㎡の物件で50万円くらい(ハウスクリーニング含む)
  • 給湯器(ガス)20万円〜
というところが目安になります。 間取りまで変えたり設備を高級なものにしたり、床の材料を無垢にするなどこだわると1.5〜2倍くらいの費用となることもあります。また、東急リデザインなど大手リフォーム会社の提供するパック商品を利用すれば(フル)リフォーム費用を抑えることも可能です。
参考:東急リデザイン https://mr.tokyu-re-design.co.jp/
キッチンは全交換すると100万円〜になりますが、例えば「コンロだけ替えたい」という「部分リフォーム」も可能で、コンロだけなら30万円〜とコストダウンできます。トイレはウォシュレットだけ、お風呂は水道とシャワー部分など部分リフォームをうまく組み合わせると出費を抑えることができます。ここであげたものはあくまでも概算であり、大まかな目安の費用感です。住戸の状況によって大きく変わりうるところでもあるので、リフォーム実施を検討する際はリフォーム会社にまずは相談・確認しましょう。

また、できれば見積もりは複数社で取り、提案内容や価格を比較しましょう。会社によって大きく変わってくることが少なくないためです。「リショップナビ」など、一括見積もり依頼ができるサイトを利用すれば、窓口担当者がマッチする業者をいくつか紹介してくれます。「ぜひここにお願いしたい!」というリフォーム会社がない場合は、効率的に進められるため便利です。

>>リショップナビ

⑤買い手の印象をよくするためにリフォーム以外にした方がいいこと

また、内覧で印象を良くするためには、リフォームでなく専門業者に依頼する「クリーニング」や「ホームステージング」もおすすめです。内覧はいわば、売れるか売れないかを決める大事な決戦の場。水回りをプロの技で綺麗に掃除してくれるクリーニングや、まるでモデルルームのようにインテリアコーディネートしてくれるホームステージングは、第一印象をぐっと引き上げ、ネガティブイメージを抑えてくれます。リフォームより費用も時間も抑えられるので、売却物件の状態に不安がある場合は利用を検討してみてください。

⑥リフォームや修理を買い手に求められたら応じる必要はあるのか?

Q:「売却交渉中に、買い手から水回りのリフォームを求められました。この場合、売り手で負担するもの?」
交渉中にこうしたことが発生した場合、売主は応じる必要はあるのでしょうか? 結論からいえば、原則、必要はありません。契約前、もしくは契約時の設備表内で買主に申告して、「壊れているのも了承のうえ」で買ってもらうものだからです。売買契約を締結するときには、「設備表」というものを買主に交付します。設備表は、キッチン・ウォシュレット・給湯器・洗面台など、室内に付いている設備を売主に記載してもらったもの。さらにその際に、付いている設備に関して契約時点で故障や不具合があるかないかの申告も行なってもらいます。例えば「ガスコンロ 有・無 故障不具合 有・無」といった形です。この設備表で「故障不具合 有」と申告したものについては、そのままの状態の引き渡しで良いのです。 逆に、故障不具合がないと申告したにもかかわらず、引き渡し後に故障不具合が見つかった場合は売主に補修する義務が発生する場合があります。大原則として、売主には
  • 修理義務はない
  • クリーニング、掃除等も特に義務はない
つまり、荷物だけ全て撤去して空室で渡せば良い、というのがベースの考え方です。 ただ、「ここは修理する代わりに指値は受けない」など、この辺りは柔軟な交渉もありえます。

⑦リフォーム費用の税金に関わる部分について

「リフォームの費用は、税金計算のときにどういう扱いになるのか?」
中古マンションの売却した際に「利益」が生まれた場合、その利益=「譲渡所得」に対して、税金がかかってきます。
譲渡所得 = 【A】譲渡対価 ー( 【B】取得費 + 【C】譲渡費用 )
リフォーム費用はマンション売却の際の「譲渡所得」を計算する際に、「取得費」として含めることが可能です。簡単に言えば、利益から差し引くことができます。 ※譲渡所得など、売却に関わる税金についてはこちらの記事にて詳しく解説していますので、詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。 ただ多くの場合、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用することにより、居住用マンションであれば、譲渡所得から3,000万円が控除できます。(居住年数に関係なく利用可能)この控除により、実際にはマイホームのマンション売却所得税は無税になるケースが非常に多くなります。3,000万円控除が適用されない場合は、リフォーム費用に関しては「譲渡対価」から差し引く「取得費」に含めることができる、と覚えておきましょう。

⑧あまりにも手を入れた方がいい場合は買取もあり?

Q:「あまりにも築年数が経っていたり状態が厳しい場合は、不動産会社に買取を依頼した方がよいのでしょうか?」
この場合、買取という選択肢も確かにあるでしょう。ですが、相当安くなる可能性があります。市場で売ったら5000万円の物件が4000万円くらいになることは普通にありえます。ただし買取であれば、先ほど「⑥リフォームや修理を買い手に求められたら応じる必要はあるのか?」で述べたような補修の義務も発生せず、「このままの状態で買い取ってもらい、引き渡した後の責任も買主(買取業者)負担です」とすることができるので、手離れをよくしたいということであれば、検討しても良いでしょう。とにかく手間なくすぐに現金化したい場合には選択肢の一つではあるといえます。

売主は荷物だけ全て撤去して空室で渡せばOK

先ほどもお伝えしたように、売主には修理、クリーニング、掃除等も特に義務はありません。また、リフォームした方が高値で売れるのでは?ということも期待はできません。リフォームという費用と時間をかける大がかりなことをせずとも、物件の印象をよくすることは可能なので、ぜひ一番効率よく、損をしない方法を選んでいただけたらと思います。
株式会社Housmart
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マンションジャーナル編集部

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