不動産業界27年のコンサルタントに聞く、新築・中古マンションのトレンドとは?

2017.09.20
不動産業界27年のコンサルタントに聞く、新築・中古マンションのトレンドとは?
一般社団法人不動産ビジネス専門家協会に在籍しており、不動産に関わるほとんどの領域で活躍し、現在は日本橋アセットコンサルタントの代表を務められる皆藤一郎様に不動産売買における現在のトレンドなどについて、マンションジャーナル編集部でインタビューをさせていただきました。続々と変化が進む不動産業界において、これからの不動産のトレンドはどのように変化していくのでしょうか。

「お客様の選択肢は増えてきている」マンション売買のトレンドとは

皆藤様取材1カウルスタッフ:「中古マンションが増えてきて、新築マンションが売れないという話をよく聞きますが、皆藤様からみて新築・中古マンションのトレンドというのはどうなっているのでしょうか。」皆藤様:「私は元々住友不動産で開発をやっていて、企画する側を体験してきました。その中で感じてきた、マンションを売る上で一番大事なのはどういうものを作っていくらで売るのかです。『最低◯◯円で売らないといけない。であれば最低金額に見合うような集客をするにはどういう価値づけをしなければいけないか』を常に考えていました。つまり、競合する他の物件ではどのような間取プラン、設備仕様、グレード、付帯施設を取り入れているのかを研究するわけです。このマーケティングの手法は今でも変わっていないと感じます。ただしそれらは今では概ね標準化してしまって『こういう施設、仕様があるからいい』という競争はもうあまりないのかな、と感じています。あとは立地です。よく言われていますが、駅近、都心部は今も人気で競合も激しいです。そのためたくさんは建てられません。もう1つ思っているのが『買いたいけど、本当に買える』マンションが本当に作られているのか、というのはあります。都内の新築分譲マンションの戸当り平均価格が6000万円を超えたとニュースになりましたが、これを本当に買えるのか、という話になります。いくらだったら買うのか、というのが混沌としてきています。それでも売れているというのはありますが…。当然マンションデベロッパーは土地を買って仕入れて、マンションを作って売っていかなければなりません。その中で中古マンションというストックが増えている。ということからお客様の選択肢は増えてきています。選択肢が増えてきている中で、大手でしかできない物件と、中小でしかできない物件の分化が進んでいるのは感じますね。戸当り6000万円を買える層は多くないですよね。大手デベロッパーが提供する都心部のマンションを買える層がいて、中古その他、郊外のマンションを買える層がいてという分かれ方があります。」

物件選びで「ここだけは外せない」ポイントとは

皆藤様取材2カウルスタッフ:「日本経済的にも、おっしゃる通り平均所得はあまり伸びていない印象です。とはいえ住宅ローンの低金利も相まって、銀行が貸してくれるという流れがきていて、億ションも共働きのサラリーマンの方でも買いやすい時代が来ているとも感じています。最近だとリノベ済みのマンションが増えてきており、物件選びのポイントとしても様々な点が上げられるかと思います。その中で皆藤様にとって中古マンション購入の際「この部分だけは外せない」というポイントがあれば、教えてください。」皆藤様:「すごく基本的な部分ですが、長期修繕計画・修繕履歴は大事ですね。どんなに専有室内一戸一戸の中身を綺麗にしたとしても、マンション全体が健全にオペレーションされているかが最も大事です。その次にマンション内部の快適性などが必要になります。過去のトラブルなどを考えた上でこれからどんなことが想像されるのか、といった部分を知っておくべきだとも思いますね」カウルスタッフ:「修繕履歴・修繕計画はお客様にもお見せしているのですが、これが大変わかりにくく、お客様としてもいいものなのか、悪いものなのかがわかりにくいことも問題だと感じます。次は契約周りに関してお伺いします。不動産契約は一般のお客様からしても大変わかりづらいものかと感じています。契約周りで「ここはお客様にとって必ずチェックしてもらいたい!」というポイントがあれば教えてください。」皆藤様:「契約は当然ながらお金を払って買うということなので、支払い条件や、引き渡し条件に注目してほしいですね。手付解除、解約条項だったりとか、あとは瑕疵担保など。売り主が不動産会社とかであれば瑕疵担保の話は細かくすることが多いですが、中古マンションを購入する場合は取引自体はCtoC(お客様同士)になる場合が比較的多いので、その場合は瑕疵担保をつけたとしても、資力の問題からほとんどが実質免責に近い状態になります。それこそ修繕履歴などを見て、もし瑕疵担保がなかったとしても、何かあったとしても修理すれば大丈夫、というところを見抜く、理解しておけるような状況に持っておいておくというのが重要です。」

1R1つ買うだけでは投資ではない」投資用マンション購入の考え方

皆藤様取材3カウルスタッフ:「最後に投資周りに関して伺います。弊社では基本的に居住用マンションの仲介をしているのですが、最近セカンドハウスや税金対策など、投資用でご購入されている方が増えてきています。弊社だけではなく、不動産業界においてそういう流れがきていると感じるのですが、昔の不動産投資と今で、異なるポイントなどはありますでしょうか。」皆藤様:「マンションに限定すると、投資用ワンルーム1戸買うだけではそもそも投資にはなりません。物件を複数買ってテナント付してリスク分散するというのであればわかりますが、ワンルームを1戸だけ買っても投資とはそもそも言えない、と私は考えています。対象が1戸だけであれば稼働率は0か100しかありません。であれば0の期間が長かったときにどうするの?という話です。もし私がお客様に相談されたらやめておけといいますね。投資以外の目的、例えば資産の置き換え、決算の対策などであれば、話は別ですが。今年、私が売却の依頼を受けたオーナーチェンジの1LDK物件を他のお客様に購入してもらったのですが、その方は立地のいい、それなりのデベロッパーが作ったマンションだけを複数買っています。物件の利回りはグロス4%台前半程度でしたが、現金で購入しているので分散投資していればそれでも見合うとのことでした。その方は物件を購入する毎に法人を作っているそうです。一方の稼働率が落ちても、もう一方が回っているからカバーできる、という考え方ですね。こういった考え方があればいいかと思います。0か100じゃ投資とは言えずにギャンブルと言った方が近いかもしれません。なので私が投資用に1戸だけ買いたいと相談された場合はNOといいます。」カウルスタッフ:「本日はありがとうございました!」皆藤様取材4取材協力:皆藤一郎様
平成2年住友不動産(株)入社。住宅・商業施設・公益施設の複合開発、マンション開発・分譲業務に従事し、平成12年退社。(株)マツモトキヨシにて店舗開発、オフィスビルデベロッパーにて営業・開発業務に従事の後、平成22年日本橋アセットコンサルタントを創業。オールラウンドな不動産の経験を活かし、ソリューション型のビジネス提案をモットーとする。
株式会社Housmart
株式会社Housmart
マンションジャーナル編集部

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