【中古マンションは管理で買おう!】マンションの管理組合とは?

2017.08.10
【中古マンションは管理で買おう!】マンションの管理組合とは?
中古マンション購入を検討している方なら、「マンションは管理を買え」というフレーズを耳にしたことがあるかもしれません。住まいの購入というとついつい立地や目新しい設備などばかりに目が行きがちですが、10年後、20年後、はたまたその先まで住まいとしての住みやすさや資産価値を左右してくる重要な要素が「管理」なのです。しかし一方で、一目瞭然の立地や設備と違って素人にはなかなか見えにくいのも「管理」の特徴です。そもそもマンションの管理とは一体どういうことなのか、購入時に何に気を付ければいいのか、ポイントを解説します。

監修者:針山昌幸

針山昌幸 プロフィール写真

株式会社Housmart 代表取締役
宅地建物取引士・損害保険募集人資格
『中古マンション 本当にかしこい買い方・選び方』
(Amazonランキング・ベストセラー1位)

管理組合とは何か

マンションの管理は、一体誰がしているのか知っていますか?「マンション管理会社」があるくらいですから、管理は管理会社がするものと思っている方も多いのではないかと思います。しかし管理はあくまでも住民が行うものであって、管理会社はそのサポートを行うに過ぎません。マンションの所有者は、自動的にマンションの管理を行う「管理組合」の一員となります。これは自治会・町内会とは違って法律上きちんと定められて加入が義務付けられていますので、いくら興味がなくても入らないといったことはできません。原則的にはこの管理組合で様々なことを話し合って、マンションの管理のことを決めていきます。しかし、十数戸程度の小規模マンションならまだしも、数十戸~数百戸にもなるマンションともなると、管理組合全員でまともな議論をすることは不可能です。そのため、通常の運営については管理組合の中から少人数の「理事」を選び、理事だけの会議=理事会を行うことでスムーズな運営ができるようにしています。ただし、予算・決算をはじめとした重要な案件については一部の人だけで決めるわけにはいきませんので、管理組合全体(所有者全員)を対象とした「総会」を適宜開催して賛否を問います。

1-1.管理会社の役割

これらの運営にあたっては当然専門的な知識が必要になったり、実務に時間を割かねばならなかったりしますが、運よく住民に専門知識や時間に余裕がある方がいるとは限りません。そこで管理組合をサポートするのが管理会社の役割となります。管理会社のサポートの入り方によって、
  1. ほぼ全ての業務を管理会社に委託する「全部委託」
  2. 会計や清掃など一部の業務のみ管理会社に委託する「部分委託」
  3. 管理会社には頼らず住民だけで管理を行う「自主管理」
という分類がありますが、近年のマンションは基本的には1の「全部委託」方式を採っています。管理会社の役割は、上で触れたような専門的知識のアドバイスや会計・清掃などの実務面での代行、理事会・総会の開催補助など広範に渡ります。同じことを住民が行うとなると過大な負荷になるため、部分委託または自主管理にして住民自身で管理の実務を行おうとするマンションは稀なのです。

1-2.コミュニティ形成の支援

また近年のマンション管理会社の業務の特徴として、「コミュニティ形成の支援」を行うことで付加価値を高める試みが増えてきている点が挙げられます。代表的なもので言えばクリスマスツリーの飾りつけ会や夏祭り(大規模マンションに限られますが)、七夕などの季節的なものから、防災訓練を発展させた消火器体験や消防車乗車体験などの親子で参加しやすいように工夫するイベントなどがあります。最近では世間の流行に乗って、ハロウィンイベントを実施するところも出てきました。どちらかというと戸建てに比べて近所付き合いをしたくない人が多そうなマンションですが、管理組合への加入が義務となっていることや、共同の建物を使用するため生活の影響が周囲に出やすいことなどから、コミュニティ形成は管理の上で外せない重要な事項なのです。

1-3.管理規約の必要性

ただしコミュニティ形成が重要と言っても、それだけではマンションの運営はスムーズに運びません。100人住んでいれば100通りの考え方がありますので、法律のような共通のルールを定めておく必要があります。そこで通常マンションに定められている、法律のような役割を果たすルールが「管理規約」です。管理規約には住戸の用途や禁止事項、理事会・総会の取り決め、管理費や修繕積立金のことなどマンションに特有な重要なルールが定められています。このルール=管理規約は国土交通省が示すお手本である「標準管理規約」を参考にしつつも、各マンションごとの事情に合わせて改変し、適切な管理規約にするのが望ましい、ということになっています。例えば、標準管理規約は一般的なファミリーマンションを想定しているので住戸の用途を住居目的以外認めていませんが、都心のマンションで1~2LDK程度の小さめの部屋があるマンションだと、事務所利用の混在をある程度認める規約になっているケースがあります。

良い管理組合の特徴

それでは、具体的に「良い管理組合」の特徴とはなんでしょうか。何といっても重要なのは、「住民に管理の意識がある」ということです。いくら業務を管理会社に委託するといっても、管理会社だけでできることには限界があり、決定の権限も基本的には住民側にしかありません。住民の管理意識が高いマンションほど、マナー意識が高い、コミュニティが良好、防災対策がしっかりしているといった傾向があります。もうひとつ重要な点としては、「管理会社に対して適切な関係を築いていること」です。管理会社はサポートをしてくれる大切な立場でもありますが、きちんとしたチェックを管理組合側から行わないと、必ずしも今必要でない工事やサービスの提案が実施されてしまう場合があります。敵でもなく仲間でもない、適切なパートナーとしての距離感の関係がポイントとなります。実際には、管理組合として以下のような状況が望ましいです。
  • 大規模修繕工事の度、資金計画、修繕計画を管理組合でしっかり話し合って実施してきたので、築年数の割に資産価値が下がらず、今でも周辺で人気のマンションとなっている。
  • 隣同士の騒音トラブルで直接苦情を言うと角が立つが、管理組合に相談して役員から誰が苦情を言ったかわからないようにうまく注意をしてもらって解決した。
  • ベランダやバルコニーで煙草を吸う住民がいて、煙草の匂いが洗濯物についたり、部屋の中に入って来て困っていた。どこの家で吸っているのかがわからず、苦情も言えず困って管理組合に相談したら、ベランダやバルコニーの煙草を注意喚起するチラシを全戸に配布してくれて、そのお陰でベランダやバルコニーで煙草を吸う人が減り煙が気にならなくなった。
  • 子ども自転車の駐輪場がなくて不便をしていたので総会で話し合ってもらい、子ども用駐輪場を新たに設置してもらった。
  • 管理組合で防災訓練を年2回行って、各フロアの一人暮らしのお年寄りや障害のある方の人数などを把握し、大きな災害時は担当の役員が介助や声掛けをするようにした。
  • 中古マンションを購入して入居したが、管理組合が子ども会を組織して夏祭りやクリスマス会を企画してくれるので子どもも地域にすぐ慣れ友達ができた。敬老会もあるので、お年寄りも孤独にならずに住んでいる。

管理組合が機能していない状況

逆に「管理組合が機能していない」とはどのような状況でしょうか。簡単に言ってしまえば先ほど挙げたことの反対である「住民に管理の意識がない」「管理会社に対して適切な関係を築いていない」状況が代表的なケースです。住民自身に管理の意識が無いと、管理会社が行う最低限の清掃や設備の維持などしか行われません。住民同士のコミュニティ意識が低いのでマナーのトラブルが起こりやすくなります。また災害時などの有事には、行政も管理会社も一時的に手が回らなくなる中で自分たちでは何もできない、といったことになってしまいます。あるいは管理会社の提案内容をチェックしていないために、過剰なサービスや工事を採用した結果、修繕のための積立金が不足するという事態にもなりかねません。管理組合が機能していないマンションでは、以下のような状況になってしまいます。
  • 大規模修繕工事の計画と予算の見通しが甘く、費用が足りずに追加費用を所有者から徴収しなければならなくなった。
  • 管理計画がずさんで、きちんと管理されておらず、共有部分が汚れていたり美観をそこね、マンションの価値を下げてしまう。
  • 管理会社とのコミュニケーションがうまくいっておらず、管理会社の対応が遅い。
  • 住民同士のトラブルを放っておいたため、裁判沙汰にまで発展してしまった。
  • 古くからいる住民が長年役員として管理組合を仕切っていて、新しい組合員が意見を言いづらい管理組合になり、マンションもなんとなく住み心地が悪くなってきた。
  • 問題は管理組合から管理会社になんでも丸投げでお任せ状態なので、そのやり方が一番マンションのために良かったのかと納得がいかない。
  • 管理組合の総会は委任状が多く、出席者は役員以外ではわずかで自治意識に欠けている感じが否めない。

マンションの建て替えは現実的ではない

適切な管理はマンションを長持ちさせますが、このことが重要な理由のひとつに「建て替えは現実的でない」ということがあります。不動産コンサルタントの長嶋修氏も、過去の弊社のインタビューでは以下のようにおっしゃっています。
マンションの建て替えは基本的に出来ません。それゆえ、管理、修繕が大事になってきます。世の中にはマンションのストック数が30万戸あるにもかかわらず、建て替え事例は250くらいしかないのです。建て替えができるのは容積率が余っているマンションで、建て替えの際に建物を大きくして、その余剰容積分を販売することで建て替え費用を捻出しています。こういったやり方が出来ないと、マンションの居住人で多額の建て替え費用を負担しなければならなくなってしまいます。建て替えの際にはマンションデベロッパーの協力が必要ですが、仮にマンションの容積率が2倍、3倍余っていたとしても、マンションデベロッパーが事業化するほどの魅力がないマンションも多いのが実情です。増えた分の部屋を売りに出しても、売れる見込みがないのです。このような背景も影響して、管理会社任せにならず、あくまでもマンション所有者が主体となってマンション管理を行っていくという意識が高まってきているということですね。
上記にもあるように、平成28年の国土交通省調査によると、築30年超のマンションが約170万戸あるのにもかかわらず、これまで建替えられたマンションはおよそ250棟にしか過ぎません。建替えともなると各所有者が多大な支出を行うことになりますが、マンション住民みんながそのような支出を同時に行うことは不可能に近く、建て替えが成功しているケースの多くは、容積率(土地の広さに対する規模)に余裕があったために、余分な容積率分をデベロッパーが新たな住戸として戸数を増やして販売しているケースです。このようなケースではデベロッパーに利益が出る分所有者の負担は相当軽減され、支出ゼロのケースも多く存在します。しかし、都合よく容積率に余剰が生まれているマンションばかりではありません。近年のマンションは、基本的に最初から容積率が最適になるように設計されています。採算が取れなければデベロッパーは事業化してくれず、そうなると結局は住民自らの支出という高すぎるハードルに直面することになります。建て替えのハードルが現実的に不可能なほど高い以上、良好な状態を長く保つ「管理」は非常に大事なのです。

管理費と修繕積立金はどのように使われているか

購入時に金銭面でよく確認しなければならないのは、ローン支払額以外にも管理費と修繕積立金を毎月支払わなければならないという点です。しかも、いずれ払い終わるローンと異なり、管理費と修繕積立金は永遠に払い続けることになる上、途中で改定して値上げすることもあります。しかしそもそも管理費と修繕積立金は何が違うのでしょうか。関連記事:マンションの管理費と修繕積立金の実態!

5-1.管理費は「ランニングコスト」

管理費はいわば「ランニングコスト」にあたります。管理会社を通して事務・会計処理や清掃、各種点検などに使われます。基本的には毎年ある程度支出は一定ですので、概ねプラスマイナスゼロか、少しだけ余裕があるくらいに各戸の管理費が設定されます。

5-2. 修繕積立金は「工事に備える貯金」

これに対し修繕積立金は「大がかりな工事に備えた貯金」です。こちらは毎年支出があるとは限らず、高価な設備や外壁を直す等の出費の大きい工事に備えて積み立てておきます。そのマンションにどのような設備があるか、規模はどのくらいか、といった点を見ていけば、「およそ何年後に修繕の必要が生じていくら費用がかかるか」はある程度予想可能です。そこから逆算して「毎年〇円ずつ積み立てなければならない」という計算で金額が設定されます。

5-3-1.大規模修繕工事の例

これらの金額はマンションの仕様や規模によって大きく異なるので基準はあってないようなものですが、当然ながら基本的にはハイグレードな仕様や豪華な共用設備などがあると金額は高くなっていきます。修繕積立金を使った大がかりな工事の代表例は、外壁を中心に補修する「大規模修繕」です。街中でマンションに足場がかかっているのを見かけたことはないでしょうか?通常10~15年ごとに行われ、外壁に足場をかけて塗装やタイルの貼り直しを行います。また、長期的視点からコストを圧縮するために、外壁以外の大がかりな工事もこの際にまとめてしまうことが一般的です。

5-3-2.長期修繕計画を確認

各マンションには、この大規模修繕をはじめとした各工事を築何年目の時点で行うか、費用をいくらと見積もっているのかを20~30年先まで織り込んだ「長期修繕計画」が、余程古いマンションでない限り定められています。この長期修繕計画の中には、工事計画から逆算して「〇年目に修繕積立金を〇円に改定する」という情報も記載されていますので、購入検討の際には必ず見ておかなければならないポイントの一つです。(ただし、この金額は定期的な見直しの中で建築相場の変動や工事項目の追加、劣化状況の進行度合い等から「途中で変更されて当たり前」の数字ですので留意が必要です。)加えて毎月の支払額に影響してくるのは、駐車場や駐輪場、トランクルームなどの付帯設備の利用です。これらは利用者だけが支払うものですが、特に駐車場に関しては都心では管理費・修繕積立金以上の金額となることも珍しくありませんので、月々の支払計算の中に入れることを忘れてはいけません。

購入を検討している人のチェックポイント

6-1.購入するなら議事録の開示を求めてみよう

中古のマンションであれば、既に管理組合が運営を行っています。そして、その状況を一番正確に知ることができるのは、理事会・総会の議事録です議事録は通常管理員室に保管されていることが多く、閲覧自体は標準管理規約上「理事長は利害関係人から請求があれば閲覧させなければならない」となっているものの、「日時・場所等は指定できる」ことになっていますので理事長の指示に従う必要があります。理事長が誰かは外部の人からは当然わかりませんので、実際には管理会社や管理員を通して聞いてもらうことになります。議事録を見れば、そのマンションで今課題となっていること、理事会や総会の出席率から伺える住民の主体性、場合によっては管理会社との関係性も見えてきます。

6-2.内覧の時のチェックポイント

議事録チェックまでしなくとも、内覧時に外や部屋内を見るだけでもある程度管理の良し悪しは感じ取ることができます。

6-2-1.外から見てわかること

まずは外観~玄関前までの外から見てわかるポイントです。
  • 植栽はきれいな状態が保たれているか
  • 自転車が散乱して置かれていないか(特にエントランス前)
  • ゴミ置き場内は臭くないか、ゴミが整理されているか
  • 蜘蛛の巣が張っているなど、清掃が行き届いていない様子はないか
  • 掲示板や共用部に日付の古い張り紙がいつまでも貼られていないか
  • あまりにモラルのないマナー啓蒙の貼り紙がないか(小便するな、等)
  • 鉄部(扉や機械式駐車場など)にサビが出ていないか
  • 住戸前の廊下に私物が放置されていないか

6-2-2.室内を見てわかること

室内は基本的に専有部なので全体の管理の問題は影響が及びにくいのですが、隣接住戸の状況は可能な範囲でチェックしておくことが無難です。
  • 騒音がしないか(できれば自分が一番リラックスしたい曜日・時間帯の確認が望ましい)
  • バルコニーにタバコの匂いがしないか(夫婦とも自宅にいることが多い休日が望ましい)
  • バルコニーに隣の住戸から飛んできたと思われるペットの毛などがないか
  • バルコニーに避難ハッチがある場合、直下に避難の妨げになるようなものが置かれていないか

6-3.住人などから話を聞いてわかること

さらに一歩踏み込んで、住民や管理員から話を聞くことができればより安心です。
  • 理事会や総会で話題になっていることは何か
  • 住民マナーが悪いと感じるか
  • 管理会社をどう思っているか
  • 壊れた設備などはすぐに直るか
  • 廊下やエントランスの電球が切れっぱなしになっていることがないか
  • 理事長はどんな人か
ただし、こうした聞き取りはあくまでも主観的なものなので、信用しすぎないことも必要です。

まとめ

「マンションは管理を買え」という言葉の重要性がお分かりいただけたでしょうか。終の住まいとして考える方にとっても、途中で転売を視野に入れている方にとっても、管理の問題は将来を大きく左右する要素です。ぜひ管理の良いマンションを選び、購入後も主体性のある管理組合の一員を目指しましょう。
株式会社Housmart
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マンションジャーナル編集部

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