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【知っておきたい】マンション建て替えの現状と実例について徹底解説!

【知っておきたい】マンション建て替えの現状と実例について徹底解説!

近頃、社会問題として話題になっているマンションの老朽化や空室の問題。その現状を打開しようとマンションの建て替えが推進されています。

制度面では以前に比べてかなり拡充されてきましたが、まだまだ十分な効果は得られていないという現状があります。

本記事では、そんなマンションの建て替えの現状や、その背後にある法律などを、実例を交えて詳しくご紹介します。

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マンション建て替えの現状

1-1.これから増えていくマンションの建て替え

1956年に日本で初めて民間の分譲マンション「四谷コーポラス」が販売されました。それから現在まで約60年、数多のマンションが供給され続け、2016年には国内のマンションストック数は約633万戸に至っています。(マンションの供給戸数に関する国交省のデータ。)そのうち約160万戸、約4分の1が既に築30年を経過しており、築50年に近いマンションは建て替えに動き始めています。建て替えを検討する要因には以下の2つがあります。

まず最初に、耐震性の不足があげられます。地震が多い日本においては、大きな地震が発生する度に建築基準法が改正され、耐震基準が厳しくなってきました。幾度かの改正の中で耐震性が大きく改正されたのは1981年6月です。これより以前を「旧耐震」とし、それ以後の基準を「新耐震基準」と呼び区別しています。行政側では地震被害を減らすため、旧耐震の建物に対して耐震補強や建て替えを促しています。

もう1つは、マンションの形態が現在のニーズに合わなくなってきていることも建て替え検討が進む要因として挙げられます。「5階建ての団地でエレベーターが無い」、「ダイニングのみでリビングが無い」、「エアコンが設置出来ない」など今の新築マンションでは当たり前に備えられている設備が無く、住みづらいことから空室住戸が増加してしまっています。

建て替えマンションとして販売されている「プラウドシティ阿佐ヶ谷」の建て替え前である「阿佐ヶ谷住宅」は1958年築。建て替えの検討が進んだ2009年頃は、350戸のうち約100戸しか入居しておらず、残りはすべて空室でした。空室が多くなりますと防犯面の問題はもちろん、管理組合総会の開催などマンション運営にも支障がでてきます。築年数が経過しているマンションの多くは同様の問題を抱えており、建て替えが選択肢の1つとして検討されるようになります。

1-2.建て替えに関わる法律

老朽化が進むマンションは耐震性の低下や空室増加によるスラム化が懸念されるため、建て替えを推進するべく法整備も進んでいます。民法の特別法である区分所有法には1つのマンションは複数の人により所有することが認められています。以前はそのマンションという共有財産を建て替える(一旦処分する)ためには、共有者(マンションの場合は区分所有者)全員の合意が必要とされていました。

したがって1人でも反対者がいれば、建て替えができず、その状況下では、建て替え計画が進むことは望めません。そのことから建て替えを推進するべく、1983年に区分所有法が大きく改正され、組合員及び議決権の総数の5分の4の賛成で建て替えが実施できるようになりました。

さらに、2002年には「マンションの建て替えの円滑化等に関する法律」が施行されたことにより、建て替え計画の進行の妨げとなっていた4つのポイントが改善されました。

  • 1つ目は「建替組合が法人格を有すること」です。建替決議後に建替組合を設立し、法人格を有することで金融機関からの融資や工事契約がスムーズになりました。
  • 2つ目は「権利変換」です。建て替え前の区分所有建物に設定されていた金融機関の抵当権等は建物が消滅してしまうことへの対応に苦慮しておりましたが、組合員の5分の4以上の賛成及び都道府県知事の承認により、新しい建物に移行できるようになりました。
  • 3つ目は「売り渡し請求」です。建て替えの決議がなされた後、建て替え計画に賛成するか否かを再度確認し、それでも反対を表明する区分所有者に対して、そのお部屋を売り渡すように請求することができます。これにより、計画に反対する住戸への対応ができるようになりました。
  • 4つ目は「一括登記」です。本来、それぞれの住戸の区分所有権について煩雑な登記申請を行う必要がありましたが、この法律により一括で登記申請が行えるようになりました。最後の5つ目は「行政指導」です。市区町村の長は、安全性が不足していると判断される建物の所有者に対して建て替えを勧告できるようになりました。

同法は2014年12月に改正がなされ、耐震性が不足しているマンションにおいては、組合員総数及び議決権総数の5分の4以上の賛成により、建物の解体と敷地の売却ができることになりました。これにより、敷地をデベロッパーが買い取り、その後マンションを建設する建て替え方法が選択肢の1つとして考えられるようになりました。また、一定規模の敷地を有する建て替えにおいては、容積率の緩和措置が受けられるようになりました。容積率の緩和措置が受けられれば、より大きな建物を建築でき、販売住戸を増やすことで建て替えコストを減らす対策につながります。

他にも権利変換時の登記費用を免税にするなどの税の優遇措置が継続しており、法律や税制の面から建て替えを積極的に推進する潮流になっています。

そして去年は政府によって都市計画法が改正され自治体が承認する再開発という条件付きで全世帯の3分の2の合意で建て替えを実施することができるようになりました。(ただし再開発以外の建て替えであれば、5分の4の賛成が必要です。)

1-3.建て替えが進まない厳しい現状

しかしながら、マンションの建て替えに関しては、組合員総数及び議決権総数の5分の4(または3分の2以上)の賛成は必要という要件をクリアすることは難しく、なかなか建て替え検討が進まないマンションも多数あるのが実情です。「現在の住戸に困っていない」「資金面の不安」「仮住まいの手間」など居住者によって建て替えに対する意識に差がありますので、区分所有法は改正されましたが、この要件が高いハードルであることに変わりはありません。

建て替えへの意思統一を図る上で一番の問題は各戸の資金です。建て替えには、旧建物の解体や新建物の建設など莫大な費用がかかります。新建物の住戸数を増やし、増加分を販売することで建て替え費用の補填とするケースが多くありますが、全ての建て替え事案で成り立つものではなく区分所有者に金銭的な負担が強いられる場合もあります。比較的裕福な住戸から年金のみで金銭的な余裕の無い住戸、住み始めたばかりで子育て中の住戸など各住戸でライフスタイルが違いますので、金銭的な負担の面から建て替えに反対する住戸もあります。

法制や税制において建て替えを推進する潮流が出来てきているとはいえ、建て替えに対する合意形成はまだまだ進んでいないのが現状です。

建て替えに関する不安とその解消

マンションを建て替えるという大きな計画を前にして、金銭的な不安を感じる居住者が多くいらっしゃいます。「建て替えの費用は今まで貯めた修繕積立金で足りるのか、持ち出しのような金銭負担があるのではないか」「解体や建築にかかる費用はどのくらいなのか」「建て替えている間の仮住まいの場所や費用はどうするのか」など。

解体や建築の費用に関してはマンションの形状によって大きく異なりますのでここで言及することは難しいですが、1つ言えることは、「建て替え計画の主体は管理組合であり、区分所有者自身であること」でです。管理組合として今までに貯めた資金(修繕積立金残高)に加え、前述のように、建て替えに伴い住戸数が増えるのであれば、それを売ったお金を建て替え費用に補填することができますが、それでも不足するのならば、追加で集めるしかありません。

各住戸の追加費用が伴わないことが理想ですので、建て替え計画について、建築する建物の形状や仮住まいの期間、全体的なスケジュールや費用をしっかりと詰める検討が必要であり、そのため検討の期間も長期に渡るマンションがほとんどです。

資金的な余裕がある住戸のみではなく、一般的に建て替えを検討するマンションは築年数の経過から高齢者が多く住んでいます。住宅金融支援機構では、年金生活などで一時的な資金捻出が難しい高齢者に対しての特例制度が用意されています。満60歳以上の方が利用でき、毎月の返済は金利のみ、融資の元本は亡くなった時に返済する制度です。これを利用すれば、相続財産における精算が可能になりますので、建て替えへの気持ちを後押しする制度です。

3.建て替えの流れ

3-1.建て替えの主体はあくまでも住人

前段でも述べましたが、あくまで建て替えの主体は管理組合であり、それを構成するのは区分所有者(住人)です。もちろん、マンションを建て替えるという大きな計画になりますので、専門家の協力も必要になってきます。建物を建設する施工業者を始め、建て替えマンションを設計する設計事務所、建て替えマンションを販売するデベロッパー、煩雑な登記申請手続きに対応する司法書士、売り渡しや退去に応じない住戸への対応のための弁護士、税金面に対応する税理士などです。

数多くの専門家が協力しながら、進めていく計画ですので、何よりも必要であり、重要であるのがコンサルタント会社です。管理組合(建替組合)の意向を十分に汲み取り、各々の分野で数ある業者の中から適した業者をアレンジメントして計画の進行を補助するのがコンサルタント会社の仕事です。主体は管理組合(建替組合)ですが、専門的な意識をもって建て替えを導く立ち位置から、コンサルタント会社が扇の要になります。

また、管理組合側でも建て替えに向けた体制づくりは必要です。一般的な管理組合は、役員を輪番制などで各住戸が順番で担っています。建て替えの検討を始めてから、実際の建て替えが終了するまで早くて数年、合意形成などが長引けば数十年という期間を要します。

その間、役員が頻繁に変わってしまうと建て替えに関する知識が積み上がりにくく、検討が進みにくい状況になってしまいます。一般的には、建て替えに関する検討を行う委員会を設立して、区分所有者との情報共有を行いながら、建て替え検討を進めていきます。メンバーをある程度は固定できる方が望ましいでしょう。

3-2.任意建て替えと法定建て替え

建て替えの方法には、大きく分けて「法定建て替え」と「任意建て替え」があります。「法定建て替え」は、建て替え決議後に建替組合を設立し、権利変換計画の認可を得た上で建て替えを進める方法です。一旦建物が滅失する建て替えにおいて工事期間中の権利が保全される安全性があります。

任意建て替え」は、建て替え決議後に建て替えに参加する任意組織を組成し、等価交換契約によりデベロッパーが主体となって建て替えを進める方法です。認可などの手続きが省かれるため、比較的スピード感がありますが、建て替え工事中の権利が保全されない課題があります。前述にある等価交換契約とは、各々の出資比率を基準に新しい建物の持分を割振る方法です。5億円の価値である土地を管理組合が提供し、5億円の建物をデベロッパーが建設した場合には新しい建物の持分は2分の1ずつになります。

また、マンション建て替えの円滑化等に関する法律に基づいて建て替えを進めていく方法の他には先ほど軽く触れた都市計画法の市街地再開発事業に基づく建て替えもあります。JR中央総武線の飯田橋駅西口周辺などマンション単独ではなく、地域全体を再開発する事業の中でマンションを建て替える方法です。この場合には、道路や公園などの整備に協力することで容積率が緩和され、タワーマンションなどに建て替える事例が多くなります。

4.マンション建て替えの実例紹介

建て替えイメージ

建て替えに至った事例として東京都世田谷区にある「桜上水ガーデンズ」をご紹介いたします。京王線の桜上水駅から徒歩3分の好立地に位置するマンションであり、建て替え前は全17棟、404戸の団地でした。1965年に分譲された団地であり、約47,000㎡のゆとりのある敷地には、その名の通り、多くの桜が植えられ、春には満開の桜のもと、住民祭りが開催されていました。

築後20年が経過する頃、50~60㎡の専有部が社会的な需要と合わなくなってきたことやエレベーターの無い建物への不満が少しずつ高まり、1986年に「建て替えを望む会有志」が発足し、建て替えに向けた意見交換が始まりました。その後、1989年には、「桜上水団地の将来を考える会」が理事会の諮問機関として立ち上がり、本格的な建て替え検討が始まりました。

最終的に建て替え決議が成立したのは2009年であり、本格的な検討からおよそ20年を要したことになります。その間には、検討する委員の入れ替わりがあり検討の進行に時間を要したことや、2度の建て替え決議の不成立など紆余曲折がありました。また、建て替え決議後も売渡し請求に関する住戸の明け渡しの裁判など大きな団地であるがゆえに多岐に渡る意見へ対応する難局を経て、2015年に「桜上水ガーデンズ」は誕生しました。

建て替え前よりも大きな建物を建築できることから、資金面では比較的余裕のある建て替え事例です。当初50~60㎡の専有面積でしたが、建て替え後の専有面積は70㎡を基準とし、それを下回る住戸を希望する方には差額を現金で支給する方法でした。また、仮住まいや引っ越しに関する費用も支払われました。

「桜上水ガーデンズ」は878戸、耐震性への不安やエレベーターが無いことへの不満から始まった建て替えは免震構造・各棟への複数のエレベーター設置につながりました。増えた分の住戸を購入した方も加わり、老若男女のバランスが取れたコミュニティに生まれ変わり、建て替え前の桜の樹の一部は残されており、旧団地時代に開催されていた住民のお祭りも大きな賑わいを見せています。永きの建て替え計画が見事に成就した事例です。

その他の建て替えの実例はマンション再生協議会のページに多く掲載されています。

著者について

株式会社Housmartマンションジャーナル編集部
中古マンションの専門会社「ハウスマート」のスタッフが、中古マンションの物件探し、リフォームやリノベーションに役立つ情報、街の魅力、インテリアやDIYのテクニックをお伝えします。

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