【差し押さえの解除・抹消】差し押え物件を購入するときの注意点は?

2016.07.28
【差し押さえの解除・抹消】差し押え物件を購入するときの注意点は?
購入したい物件に差押えの登記がついている。これって大丈夫なんだろうか……?不動産を購入したのに、自分の家が競売に出されるなんてことになれば大変です。差押え不動産の購入で気を付けるべき注意点や方法についてチェックしておきましょう。

監修者:針山昌幸

針山昌幸 プロフィール写真

株式会社Housmart 代表取締役
宅地建物取引士・損害保険募集人資格
『中古マンション 本当にかしこい買い方・選び方』
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差押えとは?

b2975c63ac901163ed4d1d6a0ff7926c_s「差押え(さしおさえ)」とは、国家権力によって私人の財産や権利の処分を禁止し、お金に換えられる状態に置くことです。差押えの他に、仮差押えとという用語がありますが、今回は差押えに注目していきます。差押えには種類が3つあります。
  • 民事執行法上の差押え
  • 行政法上の差押え
  • 刑事訴訟法上の差押え
刑事訴訟法上の差押えとは押収の一種です。警察官や検察官が押収した証拠をつめこんだ段ボールを、被疑者(容疑者)や被疑者関係者の自宅や事務所から運び出すシーン。テレビなどで見かけますよね。民事執行法上の差押えや行政法上の差押えの目的は、債務者の以下のような動きを封じ、債務者の財産が減少することを防ぐことにあります。
  • 財産を処分して該当債権への弁済以外に使うこと。
  • 財産隠し
  • 財産の譲渡
  • 財産を処分して他の債権者への支払いにあてること。
不動産に設定されるのは、民事執行法上の差押えと行政法上の差押えです。今回は、この2種類の差押えについてご説明します。

不動産を差押さえられても住むことはできる!?

不動産の差押えをされると、債務者は所有権に基づく使用・収益・処分に制限を受けますが、通常の用法に従った使用・収益は可能です。換価(財産を処分しお金に換えること)されるまでは、差押え不動産の所有権は債務者のもとにあります。通常の使用範囲内なら住み続けることができますし、人に貸し出しているのなら、賃料を受け取ることもできますが、換価され所有権が移れば、住み続けることも賃貸をすることもできなくなります。※強制管理(不動産から生じる賃料などの収益を充てる執行)がなされることとなれば、債務者は換価前でも賃料を受け取ることはできなくなります。>>>中古マンションをお得に購入できるサービスとは?

差押え中の売買契約は可能

差押え中の売買契約も当事者間では有効で、所有権移転登記もできます。ただし、競売・公売によって不動産が買い受けされれば、買主は競売・公売の買受人に対して所有権を主張できません。よって、差押えのついたままの状態で不動産を購入する買主は、通常いないのです。それでは、民事執行法上の差押えと行政法上の差押え、それぞれ具体的に確認していきましょう。

民事執行法上の差押え

民事執行法上の差押えは、私人(一般人)間の金銭債権について国が債務者に財産の処分を禁止する、強制執行の前段階の措置です。民事執行手続とは、債権者に債権を回収させるための手続であり、国が強制力を発揮します。民事執行は債務者にとって重大な権利侵害にあたるので厳格な手続きが必要です。

自力救済禁止の原則

民事事件は私人同士の事案なので「自力救済禁止の原則」が働きます。民事の場合、債務者の支払いが滞っても、債権者が自分の力で債権の支払いを債務者に強制することはできません。必ず司法機関に執行をしてもらうこととなります。

民事執行手続きの流れ

民事執行手続き(競売事件)のおおまかな流れは以下の通りです。債務者の滞納が発生債権者が競売申立競売開始決定・差押えの登記執行官の現況調査売却基準価格等の公告入札開始開札最高価買受申出人に対する売却許可決定買受人の代金納付・所有権移転登記債権者へ配当差押えのタイミングは、競売開始決定のときです。スムーズに手続きが進んだとして、開始決定から売却許可決定までだいたい半年ほどかかります。民事執行手続きは、大きく分けて2種類あります。
  • 強制執行
  • 担保権の実行
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民事執行手続きその1:強制執行

a43ea6586203855584bb1fcd94cfab0f_s民事執行手続きの強制執行とは、債務名義をもとにした請求を裁判所が強制的に実現する手続きです。裁判に勝った、相手方と和解した、公正証書を作ったのに相手方からの支払いなどがない、などという場合に債権者がとる手続きです。登記簿には差押登記原因として「○○裁判所強制競売開始決定」と記載されます。債務名義:民事執行によって実現されるべき債権の存在、範囲を表示した公の文書。

民事執行手続きその2:担保権の実行

債権者が、抵当権などの担保権を債務者の財産に設定しているとき、これを実行してその財産から支払いを受ける手続きです。担保権の実行に債務名義は不要です。手続きの流れとしては強制執行と同じです。担保権の実行を含めて、広義の「強制執行」と呼ぶこともあります。不動産取引の現場でおなじみの民事執行法上の差押えは、担保権実行のための差押えです。例えば債務者が住宅ローンの支払い不能に陥り適切な対処をしなかったため、金融機関が抵当権を行使し競売を申立て、裁判所が差押えをするような場合。登記簿には差押登記原因として「○○裁判所担保不動産競売開始決定」と記載されます。

行政法上の差押え

国や自治体の税金や社会保険料を滞納している場合などにも、差押えを受けます。行政法上の差押えとは、税金等の滞納者の特定の財産について、滞納者の処分を禁じそれを公売その他の方法によりお金に換えられる状態におくことです。公売(こうばい)とは、滞納税金の回収のために差押さえた財産を換価する手続きのことです。国税の滞納処分には国税徴収法が適用されます。また、地方税、社会保険料の滞納処分についても国税徴収法が準用されます。

自力執行権

国や自治体は、滞納税金等の迅速な徴収を目指しています。迅速な徴収のために、国や自治体には「自力執行権」が認められています。自力執行権とは、国や自治体が滞納税金等の債権を司法権に頼らず、みずから徴収できる権限のことです。司法権に頼る必要がないので、行政法上の差押えは民事執行法上の差押えより迅速に行われる可能性があります。ちなみに、国よりも自治体の方が差押えまでの行動が迅速であるようです。

民事執行法上の差押え

債権者:私人執行の主体:国(執行裁判所・執行官)

行政法上の差押え

債権者:国・自治体執行の主体:国・自治体

滞納処分の流れ

法定期限を過ぎても税金が未納状態(滞納の発生)督促状送付(滞納の確定)催告状送付・徴収者の訪問など財産調査・捜索差押え(債務者と第三債務者 [※]に差押通知書送付)換価処分・取立(不動産・動産は公売、金銭債権は取立て)滞納金へ充当※第三債務者:利害関係者(勤務先、金融機関、事業契約者、抵当権者など)を指します。法律上は「督促状を送って10日以内に滞納税金が完納されないと、債務者の財産を差押さえなければならない」とされています。ですが、必ずしも督促状の送付10日後すぐに差押えがされるわけではありません。だいたいの自治体では、督促状のあとにも催告状を発送するなどして、滞納者の支払いの意思を見ようとします。とはいえ、督促状や催告状などを無視していたら突然差押えを受ける、なんてことは充分起こりえるのです。行政法上の差押えの目的は、あくまでも滞納者に滞納税金を完納してもらうことです。または、消滅時効を防ぐという目的も。自治体の場合は、差押えをしたからといってすぐに公売手続きに入るというわけではありません。面倒な公売の手続きをとるよりも、滞納者が支払いをしてくれる方が自治体にとっては望ましいことなのです。>>>中古マンションをお得に購入できるサービスとは? 

固定資産税の滞納

08e52cdf6522eafd070571b437159297_s行政法上の差押えのうち、よくあるのが固定資産税・都市計画税の滞納によるもの。固定資産税は地方税です。国税より動きが早いとされるのでスピード感をもって対処をするようにしたいものです。

差押えは「期限の利益喪失事由」に該当する?

差押えをされたからといって、すぐに不動産が売り飛ばされるわけではないのは、行政法上の差押えも民事執行法上の差押えも同じです。滞納税金の完納を目的とする自治体は、差押えをしたとしても、滞納者が誠実に支払いの意思を見せれば公売を待ってくれるでしょう。ですが、住宅ローンなど金融機関等の抵当権がついている不動産の場合。住宅ローンは滞りなく支払っていても、税金等を滞納してしまい不動産を差押えられてしまったとします。すると、差押を「期限の利益喪失事由」に該当するもの、とみなした抵当権者が競売手続きをとる可能性があります。※「期限の利益」とは分割で支払う権利のことです。期限の利益を喪失すると、残債の一括払いを迫られます。ほとんどチェックしていないという人も多いかもしれませんが、住宅ローンを組むとき、通常なら金銭消費貸借契約書に期限の利益喪失条項が入れ込んであります。期限の利益喪失事由には以下のものがあります。
  • 債務者が倒産手続きに入ったこと
  • 債務者の支払い能力についての不安材料があること
  • 債務者の契約違反
  • 債務者の所在不明等
差押えは「債務者の支払い能力についての不安材料があること」に該当します。差押え債権者との間に公売・競売を待ってもらう話がついているのだとしても、抵当権が付いている限り安心はできないということです。民事執行法上の差押えでご説明した通り、担保権の実行は債務名義がなくても手続きを進められます。

差押え不動産への対処法

98e6bcadbaee811206d5c750b673a40a_s差押え不動産を購入するのなら、必ず所有権と抵当権が記入されている登記の抹消をしてもらわなければなりません。仮登記、差押えなどが設定されている不動産は、決済の前か同時にそれらを抹消するのが鉄則です。

任意売却とは?

競売・公売になる前の不動産を、債権者と債務者の合意に基づき第三者との間で売買をすることを任意売却と言います。競売・公売の落札相場は市場価格の7~8割ですが、任意売却なら、競売・公売による落札価額より高い価格での取引ができます。競売・公売より多くの回収額が見込めるので、差押え債権者にとっては任意売却で不動産を売却してもらう方が有利です。よって、差押え付き不動産を購入するのならば、差押え債権者に任意売却に応じてもらい、満足のいく支払いを実現したうえで、差押えの抹消をしてもらうこととなります。

複数の債権者への対応

ところで、任意売却では、ひとつの不動産にひとつの債権による権利が設定されているわけではなく、住宅ローンの抵当権、その他債権の抵当権、仮登記など、差押え以外の複数の債権による権利がついていることがあります。それぞれの債権者がより多くの返済を望むのは当然のこと。よって、各自の利害が反することもあります。とはいえ、各債権者に納得してもらえないと、抵当権や差押えなどの抹消には応じてもらえません。このように、任意売却を進めるには複雑な権利関係を器用に迅速に調整する必要があります。ですので、差押え不動産の購入の際には、各債権者や利害関係者などとの交渉や登記手続き等に慣れた信頼のおける業者に依頼するようにしたいものです。さらに、任意売却ならではのデメリットもふまえておくことも大切です。それでは、民事執行法上の差押えと行政法上の差押え、各差押えの不動産購入における対処について、気をつけるべき点をチェックしましょう。

民事執行法上の差押えの対処

民事執行法上の差押え不動産を購入する場合、債権者に競売申立の取下げをしてもらった上で、差押え登記の抹消に応じてもう必要があります。>>>中古マンションをお得に購入できるサービスとは?

競売申立の取り下げ

01df0a3ba569f249a707362f3d0a71d7_s競売申立の取下げとは、申立債権者が申立を撤回する行為です。競売開始決定が出た後でも、申立を取下げることは可能です。任意売却を進めるならば、申立債権者は取下げの条件に「債務の弁済」を挙げてきますので、売買代金などで債務を支払うなどと交渉して取下げてもらうようにします。競売申立の取下げは、買受人による売却代金の納付がなされるまで可能です。もちろんできるだけ早いに越したことはありませんが、申立債権者が自分の意思で取下げることができるのは売却許可決定の前までです。だいたい、開札期日の前日までを取り下げのめどとして考えておきます。売却許可決定後の取下げについては、最高価買受申出人または買受人及び次順位買受申出人の同意が必要です。が、同意を得るのはかなり難しいと言ってよいでしょう。
  • 売却許可決定前→申立人の意思で取下げることが可能
  • 売却許可決定後→最高価買受申出人または買受人及び次順位買受申出人の同意が必要
(サイト外)競売申立ての取下げについて |札幌地方裁判所民事第4部不動産競売係(PDFファイル)

行政法上の差押えの対処

行政法上の差押えが付いている不動産を購入する場合、「差押えの解除」をしてもらわなければなりません。差押えの解除とは、差押えの効力を将来に向かって消滅させることです。

差押え解除要件

865b8c7dbaf1c427818a6e2bf3599084_s差押の解除には、国や自治体が必ず差押えの解除をしなければならない必要解除と、裁量によって解除ができる裁量解除、2つのパターンがあります。差押え解除要件には以下のものがあります。【必要解除の要件】
  • 納付、充当、更正の取消その他の理由により滞納税全額が消滅したとき(国税徴収法第79条1項1号)
  • 差押財産の価額が滞納税金等の合計額をこえる見込みがなくなったとき(第79条1項2号)
  • 滞納処分の執行停止をしたとき(第153条)
【裁量解除の要件】
  • 滞納税額より差押え財産の価額が著しく超過するとき(第79条2項1号)
  • 滞納者が他に該当差押え財産以外の財産を提供し、その財産を差押えたとき(第79条2項2号)
  • 公売をしても買受人がなく、かつ、随意契約による売却の見込みがないととき(第79条3項)
  • 換価猶予をする場合において、滞納者の事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあるとき(第152条2項)
※随意契約:国や自治体が競争入札によらず任意の相手と契約を結ぶこと。

任意売却における行政法上の差押えの差押えの解除

行政法上の差押えの解除をする場合、以下の方法をとることとなります。
  • 滞納税金を完納する。
  • 完納が難しいなら、一部弁済に応じてもらうよう国や自治体と交渉する。
  • 該当差押え物件以外の財産を差し入れて滞納税金に充当してもらう。
  • 超過差押え、または無益の差押えを訴え解除させる。

滞納税金を完納する

原則として、延滞金などを含む滞納分すべての金額が納付されなければ、差押えの解除はされません。完納が難しいようなら、一部支払いで抹消してもらえるかを交渉します。市町村のよっては、一部支払いに対応してくれる場合もあります。

該当不動産以外の財産の差し入れ

また、滞納分を充当できるような該当不動産以外の財産を差し入れることでも差押えの解除は可能です。経済的に苦しい滞納者がそのような財産を所有している可能性は低いのですが、検討する価値はあるでしょう。

違法・不当な差押えの場合は解除を要求する

明らかに違法・不当な差押えの場合は、国や自治体に差押えの解除を要求します。訴えが認められれば、税金を完納しなくても差押えが解除されます。

超過差押えの禁止

9177e1832b93eab273c15c7adc805f82_s国税徴収法第48条1項は「国税の徴収をするために必要な財産以外の財産は、差押えることができない」と規定しています(超過差押えの禁止)。また、「滞納税額より差押え財産の価額が著しく超過するとき裁量によって差押えを解除できる」という裁量解除の規定もあります(79条2項1号)。例えば、滞納税額が10万円発生しているところに、30万円の預金と100万円の不動産を差押さえられてしまった、というような場合。このような場合、超過差押えであることを主張し、差押えの解除を求めることができます。また、差押え財産が1個の場合でも、滞納分がごくわずかなのに差押え財産が著しく高額であるなら、差押えの解除を求めることができます。ですが、滞納税額より「著しく」超過している点がポイントで、財産の価値が滞納額より大きいからといって必ずしも超過差押と認められないのが実情です。

無益な差押えの禁止

国税徴収法第48条第2項は「無益な差押えの禁止」を定めています。すなわち、「差押財産の価額が、滞納税などに先立つ他の税金等の合計額をこえる見込がないときは、その財産は、差押えることができない」というもの。また、「差押え財産の価額が滞納税金等の合計額をこえる見込みがなくなったとき差押え解除をしなければならない」とされています(79条1項2号)。差押え財産の価額<滞納税金・延滞金・処分費等の合計額上のような状態になる見込みがある場合、差押えをしてはいけない、または差押えをしたとしても解除しなければならない、ということです。このような状態になるのは以下のようなときです。
  • 財産に価値がないとき
  • 滞納税金等に優先する抵当権等の権利が財産に設定されていて、滞納税金等の徴収が見込めないとき
このような場合、差押え債権に優先する他の債権の額を証明し、無益な差押えであるとして、差押えの解除を要求することができます。現実的には、オーバーローン状態であり、競売になっても滞納税金の債権にまで配当がまわらない、という不動産にも国や自治体が差押えをすることはよくあることです。国や自治体は、無益な差押えをうたがわれるのだとしても、以下のような理由をもとに差押えを実行します。
  • 差押え手続きは、残債調査や物件評価額の厳密な算出に相当の日数を要する。
  • 実務においては、差押えの時期を失する等の事情から、税務当局の差押えの有効性が認められている。
(サイト外)在勤の滞納があり、役所から公売をかけると言われて困っております|弁護士ドットコム差押えた時点では正確な差押え財産の価値はわからないし、価額を確認するために財産の調査に時間をとられているうちに、滞納者が財産を処分してしまうかもしれない。また、差押債権に優先する他の債権に支払いがあれば、その額が減るので無益の差押えに該当しなくなるかもしれない。だから、ひとまず差押えをする、という理由です。

超過差押え・無益な差押えが認められない場合にとる手続き

差押え超過及び無益な差押えを根拠とする差押え解除を要求しても認めてもらえないなら、行政不服申立てまたは行政訴訟(裁判所に取消訴訟を提起)を検討します。行政法上の差押えは行政処分なので、行政庁に行政不服申立をすることができます。

行政不服申立の種類

  • 異議申立
  • 審査請求
  • 再審査請求
異議申立は差押えをした行政庁(処分庁)に直接異議を申立てること、審査請求は処分庁の上位の行政庁(国税なら国税不服審判所)に異議を申立てること、再審査請求は審査請求の決定に対してさらに上位の行政庁に異議を申立てることです。不服申立てをするのか、行政訴訟をするのかの選択は原則として自由です。両方同時に行うこともできます。ですが、任意売却のような時間に余裕のない手続きを進めるなか、不服申立や行政訴訟のための準備をするのは大変です。さらに、なんとか不服申立をしたり、行政訴訟を起こしたりしたとして、必ず認められるかどうかもわからない。差押え超過及び無益な差押の立証はかなり困難であることは頭に置いておいた方がよいでしょう。>>>中古マンションをお得に購入できるサービスとは?

差押え不動産への対処法:総括

ざっと差押え不動産の購入にまつわるポイントや注意点を確認しました。民事執行法上の差押えにせよ、行政法上の差押えにせよ、差押えを抹消したいなら、不動産の売買代金などで滞納分を支払うのが定番のやり方です。滞納分を清算する方法はいくつかあります。
  • 手付金によって滞納金を清算する方法
  • 売買代金によって滞納金を清算する方法
  • 滞納金相当額を差し引いた売買代金を設定し契約し、買主が売主の代わりに清算する方法
差押え不動産購入においては、決済前の差押え抹消、または同時履行が鉄則です。くれぐれも、差押えの抹消がなされていない状態で手付金や売買代金を売主に渡さないことです。

差押え不動産購入のポイント

22553b9a00ac91fd7e7787d526379752_s差押え不動産購入手続きの流れや手付金に関する注意点については、仮登記付き不動産の購入とだいたい同じです。仮登記抹消手続きと同様、差押抹消のポイントは以下のとおりです。
  • 同時履行ができない、または差押え抹消の条件があいまいなら購入しない。
  • 差押の抹消が不確実な場合、契約書に白紙解除の特約をつける(確実に抹消できるとしても特約をつけたほうか堅実)。
  • 手付金は決済時まで仲介業者に保管してもらう、もしくは手付金を支払わない。

まとめ

仮登記付き物件と同様、差押え物件は押さえるべきところをきちんと押さえればそれほど難しい案件ではありません。抵当権がついた物件を購入するように、よくあるケースだと言えるでしょう。ただし、差押債権者が個人や町金(地域で貸金業を営む小規模な金融業者)だと交渉は多少ややこしいかもしれません。いずれにせよ、信頼のおける不動産会社や仲介業者選びは必須です。仮登記付き不動産の購入と同様、リスクが高すぎるのなら、購入しないという決断も大切です。【おすすめ記事】中古マンション購入のメリット・デメリットについて売買のプロが徹底整理!
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マンションジャーナル編集部

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