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収益不動産の相続・贈与術!鍵は「評価減」「手順の把握」「法人化の効用」にあり!

収益不動産の相続・贈与術!鍵は「評価減」「手順の把握」「法人化の効用」にあり!

収益不動産を所有されている方の中には、「相続」と「贈与」で頭を悩ませる方もいらっしゃるでしょう。自分が所有している賃貸アパートを、どうすれば有利に且つ合法的に息子(または娘)に譲ることができるか。早いうちから手を打って置きたいところです。そこで今回は、「賃貸経営で覚えておきたい相続・贈与術」についてお話ししたいと思います。

賃貸アパートを複数所有している場合は、所得税と相続税対策が必須!

複数の収益不動産を保有されている方の場合、ご自分(親)に不動産所得が集中しますので、所得税対策が必要です。また、将来的に相続が発生した時に備えて、相続人(妻・子など)が納める相続税納税資金も準備しておかなければなりません。そこで、子に収益不動産を生前贈与することで、親の不動産所得を分散させて所得税を節税し、且つ、子が譲り受けた収益不動産の賃料収入を貯蓄しておくことで、相続税納税資金に充当する事ができます。

財産を贈与する場合は、現金よりも不動産、特にアパートなどの収益不動産が有利!

Ⅰ.収益不動産には建物評価減のメリットがある!

この内容については、前回のコラムの中で下記の内容をお話ししました。

不動産の財産評価は、実際の購入金額が評価の基準ではなく、住宅については購入金額よりも評価が低い固定資産税評価額が基準となり、土地についても購入価格の3割ほど評価減になる路線価が評価基準となるため、現金よりも不動産で贈与する方が贈与枠を有効に使えます。

これは、子の自宅取得について「相続時精算課税制度」の住宅取得資金を贈与するケースを選択せず、親が建てた家を贈与することにより財産評価を低減させ、贈与枠を有効に利用するというものでしたが、この制度が収益不動産についても利用できるのです。賃貸アパートなどの評価基準は相続税評価額が採用され、その評価は現金と比べて3割減となり、加えて入居率も評価の対象となります。

建物(アパート等)の相続税評価額=建物の評価額×(1-30%×入居率

さらに、この制度を応用して不動産投資をスタートさせることも可能です。仮に、2500万円の現金資産があった場合、相続税評価額は2500万円のままです。しかし、2500万円のアパートを建て、満室状態で子に贈与すれば1750万円(2500万円×(1‐30%×100%))と、750万円の評価減となり、アパートのほかに贈与できる枠が残ることになります(満室でない場合はさらに評価減となります)。

Ⅱ.収益不動産の土地にも評価減が適用される

相続における土地の評価基準は路線価で、これは実際の購入価格よりも2~4割程度評価減となります。子の自宅用地の場合、この路線価を基準に財産評価が行われますが、アパート等の収益不動産の敷地は建物と一緒に他人に貸しており(貸家建付地)、所有者の自由な利用が制限されるという観点から、土地の評価がさらに約2割低くなります。

貸家建付地の評価額=路線価×(1-借地権割合×借家権割合)最終的には2割減!

※借地権割合:60%~70%(地域によって異なる)

仮に、路線価5000万円の土地を所有している場合、更地や居住用地なら財産評価は5000万円のままですが、アパートを建てた場合の財産評価は3950万円~4100万円となり、贈与税や相続税の節税につながります。

  • 借地権割合60%の場合:5000万円×(1‐60%×30%)=4100万円 → 18%の評価減
  • 借地権割合70%の場合:5000万円×(1‐70%×30%)=3950万円 → 21%の評価減

「相続時精算課税制度」を利用した贈与術の手順

Ⅰ.贈与する前に必ずやっておくべき事

まず、アパートを子に贈与する前に、親と不動産管理会社との間でサブリース契約を交わします。サブリース契約により、不動産管理会社が賃借人となります。理由については後述します。

Ⅱ.アパートの建物のみ、親から子に贈与する

土地・建物の贈与となると、全体の評価が大きくなるため、建物のみの贈与とします。財産評価額が相続時精算課税制度の特別控除枠(2500万円)以下であれば、贈与税は掛かりません。建物の評価については、前述の通りです

○建物の評価額(固定資産税評価額)×(1‐30%×入居率)

Ⅲ.敷金と同じ金額を現金で贈与する

アパートの入居者から預かっている敷金は、入居者が退去する時に返還義務があり、敷金とセットでアパートの建物を贈与すると、「返還義務のある債務負担付きの贈与」に該当し、建物の財産評価が、固定資産税評価額ではなく実勢価格(時価)となってしまいます。さらに、贈与した親に対しても相応の譲渡所得税が課せられる事になります。そのため敷金に相当する額を、現金で贈与する形態を取る必要があるのです。

Ⅳ.敷地の評価減を生かすための対策。

前述の通り、アパートの贈与には貸家建付地という評価減のメリットがあります。ただ、この制度の適用条件では、土地・建物の所有者が同一の個人でなければなりません。このまま建物だけの贈与では、貸家建付地のメリットが生かせないことになります。そこで登場するのが上記のサブリース契約です。贈与前、建物が親名義だった時に賃貸借契約を結んだ部屋については貸家建付地の評価が継続され、その後、空室になった時にこの評価方法は適用されなくなります。贈与前に不動産管理会社とサブリース契約を交わしていれば、入居者が替わったとしても、貸主と借主の契約が続く限り、評価減のメリットが生かせる事になります。そして、サブリースする不動産管理会社は、いわゆる不動産会社ではなく、贈与を受ける子が株主で経営権もある法人の形態にすることで、収益の確保が図れることになります。
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法人化による相続・贈与術

2015年1月に相続税・所得税制度の改正が行われましたが、消費税も含め、今後も個人に対する課税は強化されていく傾向にあると言えるでしょう。一方、法人税については、安倍首相主導のもとで段階的に引き下げて行く傾向にあります。そこで、個人が行っていた不動産経営を、不動産管理会社などの法人を設立して行うことにより所得税の節税効果が期待され、さらに相続・贈与術においても、法人化が有効な手段となります。

Ⅰ.法人化による相続対策

個人(被相続人)が複数の収益不動産を所有していると、相続が発生した時に“争族”に発展する可能性が考えられます。不動産の中には、優良物件とそうでない物件が存在し、相続では自ずと優良物件の取り合いが想像されます。不動産経営を法人化する場合、①不動産の管理、②不動産の所有という二つの目的がありますが、“争族”に配慮した法人設立では、②を目的とする方が賢明と言えます。法人を不動産の所有者とし、相続人が法人の役員となって法人株式の分割割合を決めれば、物件の取り合いは無くなり、相続人全員が複数の不動産の所有・経営に関わることになります

Ⅱ.役員(家族)に報酬を支給することができる。

本人を代表取締役、妻・子など(相続予定者)を役員にすることで、給料退職金を出すことができます。個人の場合は、家族に対する報酬や経費などに細かい制限がありますが、法人であれば給料として当然に支給できますし、経費面においても打合せや会食、交通費支出、各種保険料などを経費計上できます。また、個人には退職金という概念がありませんが、法人であれば支給が可能で、その原資としては法人契約による積み立て型の保険を利用する方法があり、退職金支給の際、支給者の保険解約金が充当できます。ちなみに、法人名義の保険であれば損金扱いとなり、より損金割合が高い保険を選ぶ事もできるため、法人税対策としても有効です。

Ⅲ.法人化による所得税対策

①.個人と法人の税率の違い(*この項は数値の記述が若干多めです)

個人の所得税は、低所得であれば低い税率で、所得増となるに従って税率も高くなる「累進課税制度」となっており、2015年1月の税制改正では、最高税率が従来の40%から45%に引き上げられました(住民税率10%を加算すると55)。最高税率の対象となるのは、課税所得が4000万円を超える方ですから、メディア等であまり取り上げられていませんが、個人に対する課税強化の傾向が垣間見れると言えるでしょう。

一方の法人税率は、資本金1億円以下の中小法人で課税所得800万円超では23.9%、800万円以下なら15%と、個人と比べて低い水準にはなっているものの、実効税率(法人に課せられるその他の税も含めたトータルの負担税率)は30~40%前後となっています。が、この実効税率を段階的に引き下げ、2016年度は一気に20%まで引き下げることを安倍首相は目指し、関係省に調整を急ぐよう指示しました。政府主導による法人税減税の流れが加速しているのです。もっとも、税率の差だけで法人が有利であるとは言い切れず、税理士や専門のコンサルタントのアドバイスを聞く必要はありますが、所得税対策としての「法人化」が今後ますますクローズアップされて行くのではないかと考えられます。

②.個人と法人では、所得の分類が異なる。

個人が収益不動産から得た収入は「不動産所得」に分類されます。そして、同不動産を売却した場合、売却代金は「譲渡所得」に分類されます。もし、売却で損失が出た時に、不動産所得の利益と譲渡所得の損失を相殺(損益通算)できれば、トータルの所得税を抑えることができるのですが、個人の所得では損益通算ができないことになっています。つまり、損失は非課税でも利益は課税扱いとなり、所得税を納めなくてはならなくなります

〔参考〕10種類の所得:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1300.htm

一方の法人の場合は、個人の所得分類とは関係なく、不動産所得でも譲渡所得でも、「損益計算書」という枠の中で税法上の収支計算を行う形式になりますので、損失が出れば他の利益と相殺することが可能となり、個人では掛かっていたであろう所得税が節税できることになるのです。

まとめ

今回は収益不動産の相続・贈与術として、「評価減の利用」、「贈与する際の手順」、「法人化の効用」についてお話しさせて頂きましたが、これらすべての項目に共通するのは、“ルール”を知るということです。孫子の兵法にもありますが、敵(ルール)を知ることによって有効な対策を講じることができるようになります。日頃から「不動産」「相続」「贈与」などのキーワードには目を光らせ、制度改正への備えを心掛けるようにしましょう。

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