マンションジャーナル

中古マンション購入・売却、住宅ローンのポイントをお届け!仲介手数料が最大無料のカウルが運営。お得にマンションを買う方法や、不動産投資を成功させるコツ。住宅ローンの気を付けたいポイント、ヴィンテージマンション、タワーマンション、高級マンションをご紹介。

杭打ち問題で浮き彫りに!「青田売り」が与えるマンション購入への影響とは?

杭打ち問題で浮き彫りに!「青田売り」が与えるマンション購入への影響とは?

横浜のマンション傾斜問題で発覚した「杭打ちデータ改ざん」疑惑が益々波紋を広げる中、新築マンションの購入を検討する消費者の心理に変化が生じているようです。

現在、日本の新築マンションの分譲形態は、モデルルームを見せて竣工前に売買契約をする「青田売り」がスタンダード。竣工していないのですから、現物を見て確認することはできません。しかしつい最近までは大手デベロッパーを信頼していたので、それでも問題なく売れていました。ところが「杭打ちデータ改ざん」の発覚以来、大手デベロッパーへの信頼が揺らぎ、消費者が「青田売り」に二の足を踏むようになったというわけです。

>>マンションを買うなら知らないと損するサービスとは?

新築から中古へシフト?

デベロッパーにとって最も大きな「青田売り」のメリットは、投資資金の回収が早くできるという点。マンションが竣工する前に売買契約が成立するのですから、早い段階で投下資本の回収と利益を確保できるということです。つまり、資本回転率が高いということであり、それは開発資金の金利負担を圧縮する効果があります。結果として、純益率が上がるというわけですね。

購入する側にも、希望に応じて間取り変更ができるというメリットがあります。しかしそれは、「信用」という土台がある前提で成り立つ話。デベロッパー及び施工会社を信用できないということであれば、自分の目で現物を見て確認するしかありませんよね。

となると、現物を見て確認できるのは中古マンションということになるわけです。竣工して数年経つと不具合があれば表面化しますから、特に問題がないマンションなら安心できるということなのでしょう。それに同じ立地で同程度の間取りなら、中古の方が安く購入できますからね。

「青田売り」の構造的な問題

「杭打ちデータ改ざん」の問題発覚以来、その要因として工期に対するプレッシャーがあるのではという指摘がされています。元請けの建設会社は「工期は余裕があった」と弁明し、下請け会社は「工期における暗黙のプレッシャーは否定できない」と反論して互いに責任を押し付け合う始末。おそらく、元請けの現場担当者が直接的にプレッシャーをかけていたわけではないでしょう。しかし、「青田売り」という販売システムには、否が応でも施工現場に工期のプレッシャーをかける構造的な問題があるのです。

引き渡しが遅れると契約違反?

先程述べたように「青田売り」は竣工前に売買契約を結ぶのですが、その時点では頭金だけで残金を受け取るのは竣工後の引き渡し時なのです。契約書に引渡し時期を明記してありますので、もし竣工が遅れて期日までに引き渡しができなければ契約違反となり、違約金を支払う義務が生じます。違約金の支払いも痛手ですが、信用を失墜することはデベロッパーにとってでもあり最も避けたい事態。ですから、何がなんでも工期は守らなければならないわけです。なので、当然のことながら工期厳守は施工会社にとって至上命令ということになります。

デベロッパーは早く竣工させたい

シビアな工期に問題があるなら、初めから大幅に余裕を持たせれば良いのでは。誰もがそう考えるでしょうが、先程述べたように投下資本の回収スパンは短いほど利益につながるという構図があります。なので、デベロッパーが施工会社に工事を発注する時に、「工期は任せるから、好きなだけ時間を掛けても良いよ」なんて言うはずがありません。当然、「なるべく工期は短く、早く竣工させてくれ」ということになりますね。もちろん、デベロッパーは間違っても「手抜きしてでも早く竣工させろ」などとは言いません。当然、品質の高い施工をすることが発注する上での前提になります。

そうはいっても、元請けの施工会社は受注するために頑張ってギリギリの工程で請け負わざるを得ないわけです。だからといって、元請け会社に手抜き工事をするという発想はありません。そんなことをしたら、後で大変なことになることくらい分かっていますからね。品質を維持できるという前提で工期を決めて、それを基に一次下請けに発注します。そして二次、三次の下請けへと発注されていきます。

元請け、下請け共に、受注すれば責任を持って決められた工期内に工事を完了させなければなりません。もし提示された工期では品質を維持することが無理だと判断すれば、受注してはいけないということです。ですから、発注する側は受注した以上は責任を持って仕事をするのが当たり前という理屈になります。つまり、施主であるデベロッパーから下請け業者に至るまで、暗黙のプレッシャーが連鎖していくわけです。これが施工現場にプレッシャーをかける、「青田売り」の構造的な問題なのです。

杭打ちデータ改ざん・流用イコール致命的欠陥とは限らない

データの改ざんや流用をしているからといって、必ずしも工事に手抜きや欠陥があるということではありません。データの取扱は別にして、杭そのものは正常に施工されているケースの方が多いはずです。何故なら、データを扱う人間と杭を打ち込む人間は別だからです。杭打ちのオペレータは職人ですから、データに関係なく杭が支持層に到達するまで打ち込むことしか考えていません。もちろん中には例外もいて、いい加減な仕事をする職人もいるでしょう。しかし、そういう職人は極稀な存在です。

また、杭の本数は物件によって異なりますし、法律で詳細に本数が定められているわけではありません。仮にその中の一部が支持層に到達していなかったとしても、それが建物の傾斜を引き起こすとは限らないのです。今回の横浜のマンション傾斜についても、支持層に到達していない杭が原因であるという決定的な根拠はないのです。

10年以上で何の問題もないマンションであっても、何本か支持層に到達していない杭があるかもしれないのです。すべての杭が支持層に到達していたとしても、杭の本数が少ない設計ということもあります。とはいえ、データの改ざんや流用、あるいは偽装が許されるわけではありませんけどね。

懸念されるのは「杭打ちデータ改ざん」だけではない

構造的に工期に於けるプレッシャーがあるとするなら、杭打ち工事だけの問題ではないでしょう。杭打ちは初期の基礎工事ですから、これが遅れるとその後の工程に影響を与えます。しかし、杭打ちのデータ改ざんで工事の帳尻を合わせたとしても、その他の工事がすべて順調に進むとは限りません。

それぞれの工事で何かしらのトラブルがあれば、工程通りには進みません。最終的に遅れを取り戻して帳尻を合わせるとすれば、内装の仕上げ段階。そう考えると、不具合が起こる可能性はあらゆる工程であり得るということになります。

マンション市場が冷え込む可能性

横浜のマンション傾斜を発端に「杭打ちデータ改ざん」問題の波紋が広がり、一向に終息する気配がありませんね。ここまで問題が大きくなった要因は、本来は民間の問題である事案に横浜市が行政介入したことがあります。そして今は地方行政だけではなく、国土交通省が問題視して介入してきています。調査をする度に新たな疑惑が浮上し、今や業界全体の問題に波及しています。ここまでくると、そう簡単に終息しないでしょう。国としても、適当なところで「これで、この問題は終わり」なんてわけにはいかないでしょうしね。

消費者の不安は益々大きくなり、業界に対する不信は更に強くなっています。建築不動産業界に対する不信から、消費者が「青田売り」を躊躇する傾向が強まれば新築マンションの販売不振が懸念されます。もしそういった事態になれば、新築価格が下がることが予想されます。そしてその反面で、今度は中古価格が上昇する可能性がある。しかし、だからといって中古なら何でも良いということではありません。おそらく消費者の目はこれまで以上に厳しくなって、更に物件選びに慎重になるでしょう。それはそれで好ましい傾向ではありますが、一時的にマンション市場が冷え込むことも考えられます。そうなると、不動産業者にとっては厳しい状況になりますね。

まとめ

問題の要因が「青田売り」にあるとするなら、その本質は利益至上主義と言えるでしょう。ビジネスですから、利益を追求することは悪ではありません。しかし、企業の利益が消費者の不利益の上に成り立っているとすれば、それは重大な問題です。今後、建築不動産業界が信頼を回復するには、消費者の利益の上に自社の利益が成り立つ構造に修正する必要があるのではないでしょうか。

著者について

マンションジャーナル編集部TAKAHASHI
不動産ライター。元不動産会社勤務。長年の業界経験を生かし、かしこいマンションの選び方から不動産投資、住宅ローンなど幅広いテーマで執筆中です。

【永久保存】殿堂入り人気記事

Return Top