
- 管理費とは、マンションの共有部の維持管理や運営に充てるランニングコスト
- 管理費の相場は、「152円/㎡」とガイドラインで言われているが、物件ごとに大きく異なる
- 修繕積立金とは、共用部の大規模修繕やメンテナンスの費用に充てる資金
- 修繕積立金の相場は、マンションの規模で決まり大規模マンションであるほど安くなる傾向
- 管理費と修繕積立金は経年に連れて値上がりしていくことを必ず把握しておくこと
- タワーマンションの管理費は施設の数が多いので、高額になりがち
- 管理費の削減は可能だが、修繕積立金の削減はほぼ不可能
- 中古マンションを購入する時は、修繕履歴や修繕計画、修繕積立金の積立総額を必ずチェックすること
中古マンションを購入すれば、必ず支払わなければならないのが管理費と修繕積立金です。そもそも、管理費と修繕積立金は何に使われていて、どのような基準で算出されるのでしょうか?気になりますね。
また、特にタワーマンションは管理費が高額なことが多く、「果たしてその金額は妥当なのか?」そして「中古マンションを購入した後に、管理費や修繕積立金の変動はあるのか?」といったことも気になりますね。
管理費や修繕積立金は、ローンを完済した後もそのマンションに居住を続ける限り、毎月支払い続ける費用です。
中古マンションを購入する時は、どうしても毎月の住宅ローンの返済額につい目が行きがちですが、管理費と修繕積立金の金額やその妥当性、将来的な値上がりはあるのかということについて知っておくことがとても重要です。将来的な管理費、修繕積立金の値上がりについての認識が甘かったがゆえに、突然の値上がりに対応することができず、物件を泣く泣く売却するという手段を取らざるを得ない方も少なくはありません。
平井美穂FPへの取材でも、特に老後は注意すべきという点が強調されていました。
管理費・修繕積立金は月額3万~5万円ほどかかるケースが多く、決して無視できる金額ではありませんし、それに加えて、火災保険料や固定資産税・専有部分の修繕費も考慮しなければいけません。
特にポイントとなるのは、修繕積立金の将来的な値上げについて事前に把握しておくことです。
修繕積立金の値上がりが行われる数ヶ月前に管理組合から通知が来て、初めて知り慌てる方が多く見受けられます。
最悪な場合では、購入当初の5倍にまで値上がりした修繕積立金の支払いが出来ず、物件を手放す人もいます。
出典:https://kawlu.com/journal/2017/09/12/46117/
そこで本記事では、管理費と修繕積立金の算出方法の基準や相場、変動の有無、そしてそれらの使い道について解説致します。
監修者:針山昌幸
株式会社Housmart 代表取締役
宅地建物取引士・損害保険募集人資格
『中古マンション 本当にかしこい買い方・選び方』
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管理費とは
管理費とは、「マンション共有部の維持管理や運営に充てる費用」のことです。共用施設の維持管理及び運営に掛かる費用はマンションの所有者が共同で負担しなければなりません。
管理費の使い道は一般的には以下のようになっています。
- 管理員・清掃員の人件費
- 事務管理費(会計処理や、フロントと呼ばれるマンション担当者の費用など)
- 消防設備・エレベーター・建築物などの法定点検費
- 駐車場・宅配ロッカーなどの任意の点検費
- 植栽管理費
- 雑排水管清掃費
- 管理報酬
そのほかに、インターネット契約、ケーブルテレビ契約、(共用部の)水道光熱費、火災保険(専有部は別途契約が必要)などの経費があり、更に備品費用や臨時補修用の予算、管理組合(所有者の集まり)で運営を行うために会場や資料作成に発生する費用、といったものが管理費からの支出に含まれています。
管理費の額は、新築分譲時にデベロッパーによって設定されます。法律(区分所有法)やマンションの管理規約では、原則的に住民が自らの責任で管理するという考え方がベースになっていますが、マンションの管理は基本的に「管理会社」に管理を委託しているという点を前提として押さえておきましょう。そして主に管理を担当する管理会社は、デベロッパーの子会社もしくは関連会社というのが一般的なパターンです。
つまり、マンションを購入する時点で、管理会社と管理費の額がセッティングされているということになります。
もちろん、その管理費の中には管理会社の利益も含まれています。新築分譲後は、区分所有者で組織する管理組合が管理会社と管理業務契約を結ぶという形になります。そして殆どの場合、管理組合は集金だけして管理業務を丸投げしているのが実態です。
このような状況なので、管理業務の詳細とその費用の妥当性については、誰も分からないということです。
管理費の相場
結論から申し上げますと、管理費に「相場」というものはあるようで存在しません。
その理由として、マンションが昔の団地のように画一的なものではなく、各デベロッパーが競争を繰り広げる中で、建物の規模から構造・設備やサービスまで千差万別となったという背景があります。
例えば都心で見かける十数戸の小規模なマンションでは、
- 駐車場も平置きが1~2台のみ
- 共用の部屋も特にない
- 清掃員がごみの日だけ3時間程度入るのみ
というような管理体制になっていることが多いです。
それとは反対に、
- 機械式駐車場が数百台分ある
- 豪華なパーティールームや来客に使えるゲストルームも設置されている
- 管理員・清掃員だけでなく24時間常駐の警備員やコンシェルジュもいる
というような郊外で見かける数百戸規模のマンションでは、同じ管理費という名目でも全く中身が異なりますよね。
つまり、管理費が適正かどうかを見るためには、管理費の内訳をチェックしてそれぞれの項目が適正価格かどうか判断しなければなりません。
安易に高い、安いといったことを言えないのです。
管理費の相場の目安を念のため示しておきます。平成25年度の国土交通省の調査結果によれば、管理費の水準として多い設定は「1㎡あたり100~150円」というゾーンです。単純に平均すると「152円/㎡」となっています。
仮に、70㎡の部屋であれば7,000円~10,000円程度となります。ただし、この金額帯にほとんどのケースが属しているというわけではなく、150~200円/㎡までのゾーンにも相当数属していますので、やはり目安程度に考えておくのがよいでしょう。
さすがにそれ以上の金額帯ともなると、高額な管理費に見合った施設やサービスがあるのか、よく確認が必要です。
大規模マンションやタワーマンションはより多くの人で管理費や修繕積立金をいわば、「割り勘」できるので、管理費が割安と言われています。しかし、近年建設されているタワーマンションは、豪華な共用施設を売りにしている側面が強く、結果的に割り勘をしてもなお、管理費は高額になっています。当然そういったマンションは、維持管理費や人件費などの運営費が膨らむので、管理費は高くなります。
タワーマンションの共用設備は、とても豪華で便利ですし、魅力に感じる方も多いかと思います。ただ、その分毎月の管理費がかさむことも同時に意識すべきです。
必要以上に豪華な共用設備が自分にとって必要かどうか、検討してみてください。
入居前は魅力的だと思っていた施設も、入居後すぐに使わなくなってしまうというのはよくある話です。
一方で、戸数の少ないマンションでは、一人あたりの負担額が重く、管理費が高くなる傾向にあります。全体的な管理費用は大規模マンションの方が高いのですが、戸数が少ないので、1人あたりの負担が大きいのです。
50戸未満の小規模マンションでは一人あたりの負担が重く、300戸を超えるような大規模マンションでは管理対象の設備が多くなり、一人あたりの負担が重くなります。都内の管理費単価を見ると、100戸〜200戸のマンションが最も低いという結果が出ています。
管理費が割安な中古マンションを狙うなら、大規模で共有施設が必要最小限しかないシンプルなマンションということになります。
管理費削減は可能か?
管理費の削減は原則可能です。
管理業務に何かしらの問題がある場合は管理組合の決議によって管理会社の変更をすることができます。とはいえ、ひと昔前までの傾向としては、余程のことがない限り管理会社を変更するケースは殆どありませんでした。
しかし近年は少し様子が変わって、管理会社の見直しをするマンションが徐々に増えてきたのです。それに伴い、以前と比べて管理組合コンサルタントも活躍しているようです。
管理会社の見直しをするということは、住人(区分所有者)の意識が高く管理組合が適正に機能している証拠です。
そのような管理への意識が高いマンションでは、管理費と管理業務の内容や品質に妥当性があるかを住民(区分所有者)が自発的にチェックし、現状の管理会社で良いかどうか検討します。
そもそも管理費というのは、共有部の維持管理及び運営費の総額を各区分所有者が専有部の床面積に応じて分担して支払うものです。
ということは、管理業務に掛かる総額の妥当性が一番の問題になります。
もし管理会社が不当な利益を上乗せしていたとすれば、本来は払わなくて済んだはずのお金を拠出していたということになります。それを検証するのが、管理組合の最も大切な役割の1つなのです。
また、管理会社を変更しないまでも管理組合が業務の内容を精査し管理費の値下げ交渉をすることも可能です。
既存の管理会社と折り合いがつかなければ、委託費の安い業者を探して新規に契約すれば良いだけのことです。
しかし「安かろう悪かろう」では困りますから、管理会社の業務内容を吟味する必要があります。
複数の管理業者から相見積を取ることも大事ですが、その前に管理業務の詳細について勉強し、ある程度の知識を持つことが重要です。そうでなければ、信頼できる会社なのか、そして本当に割安な金額なのか判断できませんからね。
もし管理費を削減できたとしても、月々の負担が減ったと喜んでいるだけではいけません。月々の負担はそのまま据え置いて、管理費の削減分を修繕積立金に充当して将来の大規模修繕に備えた方が賢明です。