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広がる“杭打ちデータ改ざん”の波紋!根本にある問題とは

広がる“杭打ちデータ改ざん”の波紋!根本にある問題とは

過去10年間の旭化成建材による杭打ち工事で、300件前後のデータ改ざんがあるという疑いが浮上してきたようです。また、改ざんに関与していたのは一人ではなく、10人以上もいるとのこと。こうなると、旭化成建材への批判が高まるのはもちろん、ますます業界全体に対する不信感が広がってきます。この問題の根本にはいったい何があるのか、そして建物の安全性はどうなのか。今回はこの問題について、工事現場の実情を紹介しながら客観的な観点で検証してみましょう。
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データの改ざん・流用と手抜き工事はイコールではない

データ↑データ改ざん自体は、問題ではない

まず、データの改ざんや流用は、何の目的で行われていたのか。敢えて誤解を恐れずに言うなら、“形式的”な書類を揃えるためです。つまり、背景には「とりあえず」必要書類が揃っていれば良いという環境があるわけです。極端な話、形だけの流れ作業だから誰もちゃんと中身をチェックせず、確認するのは必要な書類が揃っているかどうかだけ。それ故に、今回のように不具合が目に見える形として現れるまで、「データの改ざん」が発覚しなかったのです。

しかし、データの改ざんや流用といった行為と、不適切な杭打ち工事は必ずしもイコールでありません。そもそも、目的がまったく異なります。便宜的な提出書類を揃えるためのデータの改ざんや流用と、手抜き工事を隠蔽する目的で虚偽のデータを捏造する行為とは別けて考えるべきです。これを同じ土俵で議論しようとすれば、闇雲に根拠のない不安を煽る結果になってしまいます。

現場作業員がプロの職人であるかどうか

現在住んでいるマンションや、購入を検討しているマンションは大丈夫なのか。多くの人がそんな不安を感じておられるでしょう。しかし、杭打ちデータの改ざんや流用が行われた建物だからといって、必ずしも不具合が生じるとは限りません。

そもそも提出されたデータは虚偽なのですから、実際の杭打ちとイコールではありません。つまり、データは虚偽でも、実際の現場では適切に杭打ちがなされている可能性も考えられます。

では、虚偽のデータとは関係なく適切に杭が打たれているとすれば、どのようなケースが考えられるのか。それは、杭打ちの作業員が腹の座った「プロの職人」である場合です。仮に何らかの理由でデータが採れなかったとしても、「プロの職人」である作業員には関係ありません。

彼らにとって大事なのは、責任と誇りを持って自分たちが成すべき仕事をすること。ですので、彼らにとってもまた提出用のデータは便宜上のものでしかなく、現場責任者が報告する書類については「我関せず」なのです。しかしそれは、現場責任者と作業員たちの信頼関係が構築されているという前提での話です。つまり、データ改ざん・流用の目的があくまでも便宜的な書類提出のためであり、不適切な工事を隠蔽するためではないことが明白でなければなりません。そうでなければ、「プロの職人」たちは黙っていません。手抜き工事をすることは、彼らのプライドが許さないのです。

しかし現場の作業員がプライドを持った「プロの職人」ではなかった場合、「我関せず」というスタンスが裏目に出ます。お互いに慣れ合いになり、楽に仕事を済ませようとする暗黙の空気が出来上がってしまうからです。目先の楽さや損得を優先して、責任や誇りをかなぐり捨ててしまうわけですね。実はこういった現場の空気が、最悪のケースを生む大きな要因になるのです。

工事現場の基本的な構成

工事参考までに、杭打ち工事における基本的な構成をご紹介します。

元請け会社 ⇒ 一次下請け(現場責任者) ⇒ 二次下請け(現場監督) ⇒三次下請け(現場作業員

工事の規模などによってケースバイケースですが、大体はこういった流れです。一次と二次が同じ会社というケースもよくあります。

現場で作業をする杭打ち機のオペレーターやその他の作業員は、三次下請けの立場です。現場監督と呼ばれる人は二次下請け会社の社員で、現場の規模によって2~3人の補助スタッフがいます。そして一次下請け会社の社員が数名いて、そのトップが現場責任者として工事現場の指揮をとるわけですね。工事の品質に最も大きな影響を及ぼすのは、現場責任者と現場作業員のコミュニケーションの密度と信頼関係の有無です。

では元請け会社の社員は何をしているかというと、事務所で事務仕事をしています。定期的に現場に足を運んで、工事の進捗状況や安全対策の確認をする程度で、元請けの所長(最高責任者)が現場に出向くことは滅多にありません。ただ、これはそれぞれの役割が違うということであって、元請け会社の社員が現場に足を運ぶ頻度が工事の品質に直接影響するわけではありません。

現場責任者の資質とその役割

344aefc14e6a44853b9d3935745d021a_s↑信頼関係を築くことが、現場責任者の最も大事な役割

現場と元請け会社をつなぐパイプ役が、現場責任者の重要な仕事です。各種提出書類の作成は一次下請け会社の社員が行い、そのトップである現場責任者が元請け会社に提出します。通常は毎朝元請け会社の事務所で朝礼兼会議があり、そこで進捗状況の報告がなされ何か問題があれば協議されます。

元請け会社が最も恐れるのは、人身事故。工事現場には多くの危険がありますから、安全管理は最重要事項なのは当たり前のこと。それに、人身事故の発生は所長の社内評価に大きく響きますからね。

次に元請け会社が重視するのが工事の進捗状況なのですが、しかし無闇に工事の遅れを咎めるようなことはしません。それよりも重要なのは、工事の品質が保たれているかということです。そして、定められたルールに従って工事が行われているかということ。

資材を置く場所や向き、重機用の鉄板の敷き方など細かく決められています。もちろん、これには安全対策という意味もが含まれています。これらの事がしっかり管理実行できているかどうかが、現場責任者の評価につながるわけです。

しかし、こういった基本的なことができていない現場責任者は元請けの評価が低くなるので、現場サイドの要望を聞き入れてもらいづらくなります。何か要望を出すと、「その前に、やるべきことをしっかりやれ」ということになります。当たり前のことですが、このあたり前のことができない、分かっていない現場責任者も少なからずいるということです。

デキル現場責任者は基本的なことはしっかりしています。工事の品質を保つためなら遠慮せずに元請けに対してガンガンものを言います。しっかりした根拠と正当性があるなら、元請けは渋々でも予算を割きますし、工期期間の延期も了解せざるを得ません。こういったことが、本来の現場責任者の仕事であり役割なのです。

デキル現場責任者は職人に育てられる

548e8ccb150cdadf2b899ee096598f06_s↑ベテラン職人は”おっかない”

大概の場合、工事現場にはおっかないベテラン職人がいるものです。何故おっかないか、それは彼らが誇りを持って仕事をしているからです。誇りあるベテランの職人は、若い現場責任者がいい加減な仕事をすれば立場に関係なく怒鳴りつけて叱ります。仕事とは何かを、若い社員に教えようとしているのです。

先程述べたように工事現場は危険の多い職場ですから、ちょっとした油断が命に関わる事故につながりかねません。それにいい加減な工事をすれば、後々大きな人災につながるリスクがあることも理解しています。それ故に、仕事に対して厳しくなるのです。

そしてデキル現場責任者は、そんなベテランの職人に敬意を払いつつ、時に意見を戦わせながら仕事を進めるます。現場で働く人たちと密度の濃いコミュニケーションをとり、信頼できる人間関係を構築していきます。

特に杭打ちはチームでする工事ですから、品質を維持するには信頼関係を前提にしたコミュニケーションが欠かせない要素なのです。その重要性を机の上での理屈ではなく、現場で教えてくれるのがベテランのおっかない職人さんなのです。そして、そのおっかない職人さんに認められて、はじめて一人前の現場責任者になるわけです。

手抜き工事は、現場責任者一人ではできない

誇りを持った職人達は、いい加減な仕事をする現場責任者を嫌います。ですので、遠慮無く現場責任者に対してものを言います。それでも是正されないようなら、その現場責任者のもとで仕事をすることを拒否するようになります。そして、そういう現場責任者を容認する会社は、取引先として敬遠されていきます。

その結果、その会社には慣れ合いで適当に手を抜いた仕事をする作業員が集まってくるわけです。そういった会社が生き残る術はただ一つ、安い金額で仕事を請け負うしかありません。請負金額が安いのは、元請けや一次下請けにとって魅力的です。もちろん、「安く請け負いますが品質は悪いですよ」、なんていう会社はありません。とりあえず、安さを売りにして仕事を確保できるわけです。

何より厄介なのが、杭打ちは土の中の工事ということ。上モノの工事のように結果が目に見えないという点です。なので、手抜きをしようと思えば簡単にできてしまうわけです。

ただ、ひと口に手抜きといっても、そのやり方は色々です。規定の手順を省いて要領良く作業を進めるのも、手抜きと言えなくはありません。問題は、その結果が後に重大な問題を引き起こす原因になるか否かです。

プロである以上、手を抜いた結果がどういう問題を引き起こすか想像できるはずです。そしてそれは、現場責任者だけが知ることではなく、現場で作業する「職人」にも分かることです。ですから、もし誇りを持って仕事をする職人がいれば、決して手抜き工事などさせません。したがって、杭打ちに携わるチーム全員が容認しなければ、手抜き工事はできないということになります。

予算や工期のプレッシャーがあるのは当たり前

この問題の背景として、工期や予算におけるプレッシャーが原因とする見方があります。しかしそういった捉え方は、問題の本質を見誤ることになりかねません。建設業界に限らず、計画と現実の誤差をどう埋めていくか、そのために最善の努力をするのが仕事の本質ではないでしょうか。

そもそも、計画した通りにことが進まないのは当たり前のこと。計画作成時に多少の修正や変更を想定して、ある程度の糊代を用意しておくのがプロというものではないでしょうか。

建築土木工事もそれは同じで、下請けと元請けの間でその糊代の使い方について協議をしながら工事を進めるのが本来の姿。ですので、下請け業者は工事の品質を保つために必要であれば、堂々と元請けに掛けあって予算や工期について交渉すべきです。正当な根拠があるなら、元請けも認めてくれるでしょう。もしそれを拒否して後に問題が発覚すれば、責任は全て元請け会社にあるのですから。

事なかれ主義が生むリスク

328f1b080156211a7c3b175ad79bc260_s↑ただ作業をこなすだけなら、ロボットでもできる

最も懸念すべきなのは、互いに何もしないこと。いわゆる、「事なかれ主義」です。下請けは元請けの顔色を気にしながら作業をし、問題があっても報告や相談をしようとはしない。元請けもマニュアル通りの書類を受け取るだけで、現場に任せきりであえて何も言わない。そうして、何事もなかったように工事が完了する。

もしそういった構図があるとするなら、誰も本来の仕事をしていないということになります。後になって何か問題が生じたとしても、誰に責任があるのか分からないし、誰も責任を取ろうとしない。そういう「事なかれ主義」的な体質が、今回のような問題を生む土壌になっているのではないでしょうか。面倒なことに関わりたくない、できるだけ責任を回避したい。そういった考え方が、結果として重大な問題に発展してしまう恐ろしさ。

そもそも、何一つ問題のない工事などあり得ません。現実の工事現場では、工事内容や作業工程をめぐって作業員と現場責任者との間で色んな意見のぶつかり合いがあるのが当たり前。そこで発生した様々な問題を、現場責任者が自分の所属する工事会社との間で調整する。そして、必要に応じて元請けと交渉しながら工事を進めていくのが正常であり、本来の姿ではないでしょうか。

そして工事に携わる全ての人間の根底にあるべきものは、工事の品質を維持するという共通の目的と誇り。これは決して“きれい事”ではなく、厳しい環境下で仕事をするこの業界に欠かせない要素であるはずです。

終わりに

データの改ざんや流用が日常的に行われているのではないか。そしてマンションだけではなく、日本中の建物の基礎に不安があるかのような風潮が広まっています。確かに一部の人間による、無責任極まりない工事の事実はあります。そしてデータの取り扱いが不適切に行われていたことも重大な問題です。しかし、杭打ちに携わる技術者や職人たちの多くは、誇りと責任をもって仕事をしています。

“品質の高い仕事をすることが、下請け業者の誇り。そして、仕事をくれる元請け会社の「顔」を潰すようなことは決してしないのが、元請けに対する答礼”これは土木業界40年のキャリアを持つ、大ベテランの言葉です。

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