マンションコンシェルジュ、本当にいらない?賛否両論の構造を徹底解説

2015.10.30
マンションコンシェルジュ、本当にいらない?賛否両論の構造を徹底解説

大規模な高級マンションでは定番になっているコンシェルジュサービス。フロントにマンションコンシェルジュが在籍し、さまざまなサービスを提供してくれます。しかしサービスの内容やクオリティはどこも同じというわけではなく、個々のマンションによって様々です。そして実際に住まわれている人たちからは、その存在に対する賛否両論の声が上がっているようです。


ではコンシェルジュサービスには、どんなメリットやデメリットがあるのか、そしてその実情とはどんなものなのでしょう。今回は、そんなコンシェルジュサービスに対する住人の賛否の声や、その実情をご紹介しましょう。

監修者:針山昌幸

針山昌幸 プロフィール写真

株式会社Housmart 代表取締役
宅地建物取引士・損害保険募集人資格
『中古マンション 本当にかしこい買い方・選び方』
(Amazonランキング・ベストセラー1位)

マンションを買ったら「コンシェルジュサービス」も付いていた

マンション購入を検討する際に、コンシェルジュサービスの有無を気にすることはあっても、それが決め手になることはないようですね。ましてや、その内容やクオリティを検討材料にすることは殆どないでしょう。


住宅の設計図とお金の写真


せいぜい「あれば、便利かも」とか、「あれば、いいな」という程度なのかもしれません。タワーマンション(以下、タワマン)等はコンシェルジュサービスを提供していることが多いため、タワマンを検討しているような方ですと、マンションを買ったら「コンシェルジュサービス」も付いていたという方も多いのではないでしょうか。そもそも、住人になって実際に利用してみないとどのようなサービスを提供してくれるかという実情は分かりませんからね。

「あれば、いいな」では済まない、コンシェルジュサービスの影響

ビーコンタワーレジデンス フロント写真

マンションコンシェルジュがいるマンションに住んでいる、それはマンションコミュニティの観点からみてもそれで一つのステイタスにはなるでしょう。しかし忘れてならないのは、マンションコンシェルジュや様々な共用部のサービスを支えているのは、居住者が払う管理費ということです。そして一旦購入してしまえば、コンシェルジュサービスの内容が悪いからといって簡単に出て行くわけにはいきません。


例えば、常時2名体制で24時間対応であれば、最低でもコンシェルジュが45人は必要になります。ということは、人件費だけでもかなりの金額になりますよね。そしてその人件費は、区分所有者が毎月支払う管理費に含まれているのです。


仮にコンシェルジュサービスの内容やクオリティに不満があっても、決められた管理費は払わなくてはなりません。つまり無駄で不必要と感じることに、毎月高いお金を払わされるということになるのです。


もちろん、クオリティの高いサービスを提供してくれるコンシェルジュのいるマンションも多くあります。そして、そのサービスを心地良く感じるか否かは、それぞれの趣向や価値観によっても違います。ですので、コンシェルジュサービスというのは、「あれば、いいな」という単純な問題ではないのです。

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そもそも、コンシェルジュサービスって何なの?

もともとコンシェルジュというのは、フランス語で「アパートメントの管理人」を意味する「Concierge」が語源です。それが単なる管理に止まらず、次第に広義な意味で使われる様になって、今では主にホテルでお客様に多彩なサービスを提供する職をコンシェルジュと呼ぶようになったみたいですね。


ベリスタ溝の口 フロントサービス


マンションのコンシェルジュサービスはホテルのコンシェルジュサービスに近く、様々なサービスを提供していることが一般的ですが、サービスの対象になるのは住人ですからホテルのコンシェルジュとは本質的に役割が違います。サービス内容は、マンションによって異なりますが、一般的には下記のサービスが基本になります。

  • 共用施設の予約受付
  • 来訪者の受付・案内
  • 荷物の一時預かり
  • メッセージ預かり
  • クリーニングの取次
  • 宅配便の発送受付
  • デリバリー・ケータリングサービス紹介
  • 各種レンタルサービスの紹介
  • はがき・切手の販売
  • 郵便物の発送
  • タクシー・ハイヤーの手配

この他にも様々なサービスを提供してくれるところもありますが、バリエーションが増えればそれなりに管理費に跳ね返ってくると思って間違いないでしょう。


ただし、マンションによって違いますが、すべてのサービスが無料というわけではありません。コンシェルジュサービスを利用する人としない人がいますから、すべてのサービスを無料にすると不公平になりますからね。とはいえ、マンションコンシェルジュがいるというだけで、サービスを利用しなくても費用はかかります。問題は、これらのサービスが自分にとって必要かどうかですね。


30代や40代の世代と高齢者では、サービスの利用頻度や価値観に違いがあるでしょう。ホテルのように知らない土地で利用するなら価値があっても、住んでいる土地では不要なこともあるでしょう。このくらいのことは自分でできるという人にとっては、まったく不必要なサービスということになりますよね。しかし忙しい人や面倒くさがり、一人暮らしの高齢者にとっては、便利で有り難いサービスということもあるでしょう。

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コンシェルジュサービスの費用対効果

ブリリアマーレ有明タワー&ガーデンフロント写真

先程も述べたように、コンシェルジュサービスの経費は管理費に含まれています。したがって、管理費とサービスの費用対効果がどうなのかが、マンション選びにおける一つの目安になります。


とはいえ、単純にお金で換算できないことも多々あります。エントランスに常に人がいるというだけでも、防犯効果はあります。何かの用事でほんの少しの時間、小さなお子さんを一人でロビーで待たせても、コンシェルジュに見てもらっていれば安心です。


そして、出かける時に「行ってらっしゃい」、帰ってきた時に「お帰りなさい」と声をかけられて感じる人の温もりは、お金には換算できませんよね。

コンシェルジュは不要という住人の声

不満げな女性の写真
  • 朝早くでかけて帰宅するのもいつも遅いから、コンシェルジュの姿を見たことないので必要ない気がする
  • マンションンの1階にコンビニがあるので、宅配の発送や受け取りもできてそれで十分事足りるので不要
  • 何もすることがなくて暇そうにしている姿をよく見かけるので、本当に必要なのか疑問
  • 駅近でアクセスの良い立地なのでタクシーも外に出ればすぐに来るし、大概のことは自分でするから利用する機会がない
  • エントランスを通る時、その都度挨拶されるのが鬱陶しい
  • あまり使わないサービスにお金をかけるなら、将来の大規模修繕費用に回して欲しい

全体的に不要と考えているのは若い世代の男性が多いようです。それともう一つ、タワーなどの大規模マンションの住人という共通点もありますね。特に多様な間取りがあり価格も大きく違うタワマンの場合は、上層階と下層階では住人の年代や経済状況などの差が大きいという点があります。ですので、どうしても金銭感覚や物事の価値観に違いが出てくるのでしょう。


実際に住む前は、コンシェルジュがいるマンションはカッコ良いと思っていたけど、いざ住んでみると費用対効果を考えて無駄に感じるようになるみたいですね。そしてこういったコンシェルジュ不要という声は、それぞれのマンションにある共有施設についても共通しています。根底にあるのは、それほど使わないのに経費の無駄遣いではないかという考え方のようです。


おそらく、すべての住戸が億単位の超高級マンションであれば、クレームや様々な注文はあったとしても不要という声は出てこないでしょう。そもそも、億単位のマンションに住む人たちにとっては、管理費の額よりステイタスを感じられる快適な暮らしの方が重要でしょうからね。

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コンシェルジュサービスを肯定する住人の声

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  • コンシェルジュがポーターサービスもしてくれるので、荷物が多い時はすごく助かる
  • 遅い時間でもエントランスに人がいてくれるので、一人でも安心
  • 笑顔で挨拶してくれるので、心がなごむ
  • こまごまとした日常的な相談にも応じてくれるし、話し相手にもなってくれるがすごく有り難い
  • 夫婦共稼ぎでいつも忙しいので、ゴミ出しをしてくれるとか、宅配を預かってもらえるのはとても助かる
  • 長期の出張や旅行で長く留守をする時、部屋の換気やペットの世話を頼めるのでとても助かっている

コンシェルジュ肯定派は、どうもご婦人や高齢者が多いようです。。利便性もありますが、経済的なメリットではなく、安心やちょっとした気配りによる精神的な面を評価しているように感じます。特にご婦人方にとっては、男性が思う以上に「安心」とか「親切」ということが重要なポイントになるのでしょうね。

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コンシェルジュの雇用形態

ブリリアマーレ有明タワー&ガーデン廊下の写真

意外と知られてないというか、あまり関心を持たれていないのがマンションコンシェルジュの雇用形態ではないでしょうか。ところで、彼ら彼女たちの雇い主は一体誰なのでしょう。

基本的に、コンシェルジュはマンション管理会社の指揮監督のもとで業務にあたります。しかし、マンション管理会社の正社員というケースは殆どありません。大概は、コンシェルジュサービスを取り扱う派遣会社に所属しています。そしてマンションコンシェルジュとしてのスキルは、はっきり言ってピンキリです。


ホテルでのコンシェルジュの経験がある人や秘書の経験がある人もいますが、まったくの未経験者も多くいるというのが実情です。ですので、最近は派遣会社がマンションコンシェルジュのアルバイトの募集広告を出しているのをよく見かけます。つまり、アルバイトでマンションコンシェルジュの仕事をしている人が意外と多くいるということです。

コンシェルジュのクオリティは管理費に反映する

当然のことながら、スキルの高いマンションコンシェルジュは賃金も高いわけです。ですので、クオリティの高いコンシェルジュサービスを提供するためにはコストも高くなるわけで、管理費もそれにともなって高くなるということですね。


お金の写真


いつも笑顔で優しく丁寧に対応してくれて、細かいところに気遣いをしてくれる。そういった品質の高いサービスを提供することができるマンションコンシェルジュのお給料は、それなりに高いのは当然でしょう。そして、そういうスキルの高い人材の数は限られています。なので、高いクオリティを要求される超高級マンションに優先的に派遣されることになりますね。

多くのコンシェルジュはアルバイト

アルバイトだからといって、一概にサービスの品質が悪いとは限りません。マンションコンシェルジュは接客業でもあるので、人と接するのが苦にならず人に喜んでもらうことが嬉しいと思える人には向いている仕事です。ですから、その人となり次第ということになりますね。


研修などで最低限の品質は保たれているものの、必ずしも適材適所で働いている分ではないので、マンションコンシェルジュのクオリティにはバラつきがあります。つまり、当たり外れがあるわけですね。

人対人のサービスなので各戸の住人との相性は多少あると思いますが、クオリティが高いサービスは、誰に対してもが通常の品質以上のサービスを提供することができるということでもあります。しかしアルバイトやパートという待遇で、そこまで要求するのは無理がありますよね。


優秀な人材には、それ相応の待遇を用意するなり高い報酬を支払う必要があります。しかし現実は、なかなかそうはいかないところがあります。ですから、マンションによっては住民からマンションコンシェルジュは必要ないという意見が出るのも、ある意味仕方のないことなのかもしれませんね。

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意外と多い人の入れ替わり

ブリリア有明スカイタワー フロント写真

キャリアを積んでいないアルバイトの方ですと、未熟な点も多々あります。本人の努力次第ですぐにプロフェッショナルとしてのサービスを提供する方もいますが、マンションに馴染むことも含めて時間がかかります。

その中でも厄介なのはクレーム対応。これはマンションコンシェルジュという仕事に限ったことではありませんが、非常にナイーブであり、かつ大切な業務でもあります。ですので、経験の浅いマンションコンシェルジュにとってクレーム対応は非常に難しい業務ということになりますね。


クレームとまではいかなくても、住民から様々な要望や指摘があります。失礼があってはいけませんし、怒らせることなど以ての外。悲しいかな、まじめな人ほど強いプレッシャーを感じるもので、そこで耐え切れず退職してしまうケースが多いのです。


アルバイト待遇だとコンシェルジュの時給はエリアやマンションのグレードによって大きな差があり、地方のエリアだと1,000円程が相場のようですが、高級マンションだと2,000円近く出るケースもあります。バイト代としては悪くない額ですが、実際にマンションコンシェルジュの仕事をしてみると割に合わないからと辞めていく人が多いのです。そのため、マンションコンシェルジュのバイトを年中募集する必要があり、コンシェルジュの派遣は需要が多い割には利益が出ないというのが実情のようです。

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コンシェルジュサービスは管理会社の収益源の一つ

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どのマンションのコンシェルジュサービスにも共通してあるのが、クリーニングや各種レンタルサービスなどの取次。実はこれらの取次をすることによって、業者から紹介手数料が入るのです。ただ、その手数料分が上乗せされるわけではないので、住民には負担はありません。管理会社の収益になるだけのことです。


双方にメリットがあるので、大いに活用すべきサービスではありますね。敢えてデメリットを挙げるなら、利用できる業者が決まっているため選択の余地がないということでしょうか。でも、その分手間が省けるのですから問題ないでしょう。


コンシェルジュサービスを利用することが管理会社の収益に繋がるとするなら、マンションコンシェルジュの人件費に当てることもできますよね。逆にいうと、コンシェルジュサービスを利用しなければ、その分だけサービスコストが高くなるという考え方も成り立ちます。本質的な意味での費用対効果は、コンシェルジュサービスがビジネスとして成り立つかどうかで決まってくるのではないでしょうか。

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まとめ

これまでデベロッパーは、コンシェルジュサービスをマンションの付加価値として位置づけてきました。しかし今後は、マンションコンシェルジュのスキルや、クオリティのレベルが伴わないサービスでは付加価値どころかお荷物になりかねません。そうなると、コンシェルジュサービスの品質がマンション購入における重要なポイントになるかもしれませんね。

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マンションジャーナル編集部

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