
大規模な高級マンションでは定番になっているコンシェルジュサービス。しかしサービスの内容やクオリティはどこも同じというわけではなく、個々のマンションによって様々です。そして実際に住まわれている人たちからは、その存在に対する賛否両論の声が上がっているようです。
ではコンシェルジュサービスには、どんなメットやデメリットがあるのか、そしてその実情とはどんなものなのでしょう。今回は、そんなコンシェルジュサービスに対する住人の賛否の声や、その実情をご紹介しましょう。
監修者:針山昌幸
株式会社Housmart 代表取締役
宅地建物取引士・損害保険募集人資格
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目次
マンションを買ったら「コンシェルジュサービス」も付いていた
マンション購入を検討する際に、コンシェルジュサービスの有無を気にすることはあっても、それが決め手になることはないようですね。ましてや、その内容やクオリティを検討材料にすることは殆どいないでしょう。
せいぜい「あれば、便利かも」とか、「あれば、いいな」という程度なのかもしれません。実際、“マンションを買ったら「コンシェルジュサービス」も付いていた”というのが実態ではないでしょうか。そもそも、住人になって実際に利用してみないと実情は分かりませんからね。
「あれば、いいな」では済まない、コンシェルジュサービスの影響
コンシェルジェがいるマンションに住んでいる、それはマンションコミュニティの観点からみてもそれで一つのステイタスにはなるでしょう。しかし忘れてならないのは、コンシェルジュや様々なマンションのサービスを支えているのは、居住者が払う管理費ということです。そして一旦購入してしまえば、コンシェルジュサービスの内容が悪いからといって簡単に出て行くわけにはいきません。
例えば、常時2名体制で24時間対応であれば、最低でもコンシェルジュが4~5人は必要になります。ということは、人件費だけでもかなりの金額になりますよね。そしてその人件費は、区分所有者が毎月支払う管理費に含まれているのです。
仮にコンシェルジェサービスの内容やクオリティに不満があっても、決められた管理費は払わなくてはなりません。つまり無駄で不必要と感じることに、毎月高いお金を払わされるということになるのです。
もちろん、クオリティの高いサービスを提供してくれるコンシェルジェのいるマンションも多くあります。そして、そのサービスを心地良く感じるか否かは、それぞれの趣向や価値観によっても違います。ですので、コンシェルジュサービスというのは、「あれば、いいな」という単純な問題ではないのです。
そもそも、コンシェルジェサービスって何なの?
もともとコンシェルジェというのは、フランス語で「アパートメントの管理人」という意味だそうです。それが次第に広義な意味で使われる様になって、ホテルでお客様に多彩なサービスを提供する職をコンシェルジェと呼ぶようになったみたいですね。
それと似たようなイメージでマンションのコンシェルジェサービスがあるのですが、サービスの対象になるのは住人ですからホテルのコンシェルジェとは本質的に役割が違います。サービス内容は、マンションによって異なりますが、一般的には下記のサービスが基本になります。
- 共用施設の予約受付
- 来訪者の受付・案内
- 荷物の一時預かり
- メッセージ預かり
- クリーニングの取次
- 宅配便の発送受付
- デリバリー・ケータリングサービス紹介
- 各種レンタルサービスの紹介
- はがき・切手の販売
- 郵便物の発送
- タクシー・ハイヤーの手配
この他にも様々なサービスを提供してくれるところもありますが、バリエーションが増えればそれなりに管理費に跳ね返ってくると思って間違いないでしょう。
ただ、マンションによって違いますが、すべてのサービスが無料というわけではありません。利用する人としない人がいますから、すべてのサービスを無料にすると不公平になりますからね。とはいえ、コンシェルジェがいるというだけで、サービスを利用しなくても費用はかかります。問題は、これらのサービスが自分にとって必要かどうかですね。
30代や40代の世代と高齢者では、サービスの利用頻度や価値観に違いがあるでしょう。ホテルのように知らない土地で利用するなら価値があっても、住んでいる土地では不要なこともあるでしょう。このくらいのことは自分でできるという人にとっては、まったく不必要なサービスということになりますよね。しかし忙しい人や面倒くさがり、一人暮らしの高齢者にとっては、便利で有り難いサービスということもあるでしょう。
コンシェルジェサービスの費用対効果
先程も述べたように、コンシェルジェサービスの経費は管理費に含まれています。したがって、管理費とサービスの費用対効果がどうなのかが、マンション選びにおける一つの目安になります。
とはいえ、単純にお金で換算できないことも多々あります。エントランスに常に人がいるというだけでも、防犯効果はあります。何かの用事でほんの少しの時間、小さなお子さんを一人でロビーに待たせても、コンシェルジェに見てもらっていれば安心です。
そして、出かける時に「行ってらっしゃい」、帰ってきた時に「お帰りなさい」と声をかけられて感じる人の温もりは、お金には換算できませんよね。
コンシェルジェは不要という住人の声
- 朝早くでかけて帰宅するのもいつも遅いから、コンシェルジェの姿を見たことないので必要ない気がする
- マンションンの1階にコンビニがあるので、宅配の発送や受け取りもできてそれで十分事足りるので不要
- 何もすることがなくて暇そうにしている姿をよく見かけるので、本当に必要なのか疑問
- 駅近でアクセスの良い立地なのでタクシーも外に出ればすぐに来るし、大概のことは自分でするから利用する機会がない
- エントランスを通る時、その都度挨拶されるのが鬱陶しい
- あまり使わないサービスにお金をかけるなら、将来の大規模修繕費用に回して欲しい
全体的に不要と考えているのは若い世代の男性が多いようです。それともう一つ、タワーなどの大規模マンションの住人という共通点もありますね。特に多様な間取りがあり価格も大きく違うタワーマンションの場合は、上層階と下層階では住人の年代や経済状況などの差が大きいという点があります。ですので、どうしても金銭感覚や物事の価値観に違いが出てくるのでしょう。
実際に住む前は、コンシェルジェがいるマンションはカッコ良いと思っていたけど、いざ住んでみると費用対効果を考えて無駄に感じるようになるみたいですね。そしてこういったコンシェルジェ不要という声は、それぞれのマンションにある共有施設についても共通しています。根底にあるのは、それほど使わないのに経費の無駄遣いではないかという考え方のようです。
おそらく、すべての住戸が億単位の超高級マンションであれば、クレームや様々な注文はあったとしても不要という声は出てこないでしょう。そもそも、億単位のマンションに住む人たちにとっては、管理費の額よりステイタスを感じられる快適な暮らしの方が重要でしょうからね。
コンシェルジェサービスを肯定する住人の声
- コンシェルジェがポーターサービスもしてくれるので、荷物が多い時はすごく助かる
- 遅い時間でもエントランスに人がいてくれるので、一人でも安心
- 笑顔で挨拶してくれるので、心がなごむ
- こまごまとした日常的な相談にも応じてくれるし、話し相手にもなってくれるがすごく有り難い
- 夫婦共稼ぎでいつも忙しいので、ゴミ出しをしてくれるとか、宅配を預かってもらえるのはとても助かる
- 長期の出張や旅行で長く留守をする時、部屋の換気やペットの世話を頼めるのでとても助かっている
コンシェルジェ肯定派は、どうもご婦人や高齢者が多いようです。それに言っていることが、何となくセレブっぽいですね。利便性もありますが、経済的なメリットというより精神的な面で評価しているような感じがします。特にご婦人方にとっては、男性が思う以上に「安心」とか「親切」ということが重要なポイントになるのでしょうね。