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オール電化住宅の知られざるメリット・デメリットとは

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オール電化住宅の知られざるメリット・デメリットとは

ガスを使わず冷暖房から給湯まですべてを電気で行うのがオール電化住宅。その名前は聞いた事がある方も多いと思いますが、今のところ日本ではあまり普及しているとは言えません。実際どんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

オール電化住宅の歴史

オール電化住宅と言うと最近のものだという印象を持つ方がいるかもしれませんんが、日本でその歴史をさかのぼると実は大正時代から存在していた事がわかります。

旧帝国ホテルの設計で有名な建築家フランク・ロイド・ライトが手掛け1924年に作られた神戸の旧山邑邸(現ヨドコウ迎賓館)が日本で最初のオール電化住宅として知られています。

それ以来、オール電化住宅には何回かのブームがあり、たとえば1980年前後に建築された高級マンションにはオール電化の物が散見されます。有名なものでは江戸川区の住宅都市整備公団のマンション(1982)やペアシティルネッサンス高輪(1980)、もう少し身近な物件ではペアシティと同じ東高の設計によるライオンズガーデン調布(1981)などがあります。

さらに現在では単身赴任用や短期居住用のアパートやマンションの多くはオール電化の物件になっています。わざわざそれらをオール電化で作るという事は何かしらのメリットがあるはずです。

しかし一般にはオール電化が普及しているとはいまだに言い難いのが現状。特に東日本大震災による電気への不信感もあり、最近はオール電化という言葉をあまり聞かなくなっています。

さて、ガス電気併用が当たり前の中で、わざわざすべてを電気で行う事のメリット・デメリットには何があるのでしょうか?

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オール電化のメリット

よく知られているのは火を使わない事による安全性です。一戸建ては当然の事として、特に複数の家庭が共同生活を送るマンションにおいて、他の部屋での火事やガス爆発のリスクはできれば避けて通りたいところです。

そして、それらの事故を避けるための一番単純で効果的な方法は「そもそも火を使わないようにする事」です。問題の根を根本から解決する、単純ですが一番効果的な対策だと言えます。どうしても管理が行き届かない短期居住用のマンション等がオール電化になっているのはまさにこれが理由です。

安全性の高さとメンテナンス性

また、火を使わないメリットはそれだけではありません。故浦辺粂子さんが、1989年に、お湯をわかそうとした際にガスコンロの火が着衣に燃え移り大火傷で亡くなった事を覚えている方もいるかと思いますが、特に高齢になると、火の管理はとても深刻な問題となります。

実際に、高齢者が火事に至らなくても火の不始末による火傷等で亡くなっている例は想像以上に多くなっています。最近の住宅はバリアフリーに配慮した設計のものが増えていますが、きちんとしたバリアフリーを考えるのであればそもそも火の使用を避けるような設計にするのが正しい設計だと言えるでしょう。

さらに細かい事をあげれば、ガスレンジとは構造的に異なるIHコンロ回りの掃除のしやすさや、タイマーによる火の管理等があげられます。

災害時の強さは電気の方が上

そして、一般に知られていないメリットがもう一つあります。これはとある不動産屋さんに聞いた話なのですが、東日本大震災の後、宮城から東京に引っ越すためにマンションを探して訪ねてきた方がいらっしゃいました。

その方が探す物件の条件として「オール電化の物件」を指定してきたそうなのです。その不動産屋さんはオール電化の物件にあまりいい印象を持ってなかったために、なぜオール電化の物件を探しているのかその理由を聞いたそうなのです。

すると「東日本震災の後、電気は2日で復旧したが、ガスが使えるようになるまで2週間以上かかった。震災によりライフラインとしての信頼度の差を痛感したためオール電化住宅の家を探している」との回答があったとか。

実際に過去の震災での実際に全体の90%でライフラインが回復するまでの所要日数を調べてみると

東日本大震災

  • 電気 4日
  • ガス 34日

阪神淡路大震災

  • 電気 1日
  • ガス 61日

と比較にならないほど大きな差がついています。

どちらも比較的寒い時期の震災だったのですが、給湯にガスしかない家庭では暖かいお湯を使う事が難しい状態が長く続いていたことになり状況の深刻さがうかがえます。

これなどは、普段の生活にはあまり関係ないものの、いざというときの事を考えれば考慮しておく問題だと言えます。また震災等を考慮するのであればガス漏れ等のリスクを排除できるという面でそもそもガス管自体が存在しないメリットは非常に大きいと言えます。

まとめるとオール電化住宅のメリットは

  • 火を使わない事による安全性
  • バリアフリー
  • 災害時のライフラインとしての安定性・安全性

になります。

オール電化のデメリット

さてメリットだけを見ればいい事ずくめに見えるオール電化住宅ですが、実際にオール電化があまり普及してない現状をかんがえれば何かしらのデメリットがあるはずです。デメリットとしては何があるのでしょうか?

まずは、火を使わない=火を使えない事によりいろいろな制限がかかることです。一般家庭でガスを使うのは、給湯とキッチンの2か所です。この2か所を見てみましょう。

キッチン

まずはキッチンです。オール電化住宅の場合、当然ながらガスコンロが使用できないため、IH調理器というものを使用します。

これは日本語で電磁調理器という言葉通り電磁で鍋を発熱させるものなのですが、その言葉通り「磁石に反応するもの」しか温める事ができません。純粋なアルミ鍋や、鍋の定番である土鍋は、IH調理器では使えないのです。

調理器具の制限は意外とツラい

市販の鍋をよく見ると「IH可」というマークがついたものが販売されている事がわかりますが、逆に言えばそうでないものの多くは使用できません。

もちろん、IH可と書かれていなくても磁気に反応するものであれば使用可能であり、たとえば数十万円もするような伝統工芸の南部鉄瓶を作っている職人さんは、南部鉄瓶の使用には火を用いずにIH調理器を使う事を推奨していたりします。

これは鉄が磁石と相性がいい事、鉄瓶を火に当てるより傷まない事が理由なのですが、昔からある伝統工芸と最新のIH機器というのはおもしろい組み合わせですね。

ともあれ、この「鍋に制限がかかる事」は大きなデメリットであり、ガスとの使い勝手の違いも含めて普及への大きな障害となっています。

調理方法に限定も

また火を使わない事による調理の制限があります。たとえば「チャーハンは火の中を米が通るように鍋をふって炒める」ようなイメージがありますが、実際に火を使わないIHではそのような調理は不可能です。そもそもコンロから鍋を離すと鍋を温めることができない構造のため、コンロから鍋を放す、具体的には「鍋を振る」ような調理はできないのです。

給湯について

一方で給湯に関しては特に何の不便もありません。これは私自身が実際にオール電化マンションで10年以上住んでいたので断言できますが、給湯に関しては一般のガスでできる事はオール電化でもすべて行えます。

オール電化の電気代や光熱費

また光熱費についてはどうでしょうか?これについては、残念ながらオール電化住宅の方が高くなります。

ガスを全く使用しない=ガスの基本料金+使用料がかからず電気に一本化できるというメリットはあるのですが、最近の電気料金値上げの流れの中で、特に電力会社がオール電化住宅向けの料金プランの値上げ幅を大きくしているためです。

オール電化住宅は夜間の余剰電力を利用してお湯を炊き上げそれを日中利用するシステムの家がほとんどなのですが、その夜間料金が最近特に値上げされてきています。利用状況にもよるので具体的にいくらとは言えませんが、オール電化の場合、ガス電気併用より光熱費が数割高くなるのが普通です。

またガスがないという事で、当然ですがガスストーブやガス炊飯器などのガスを使用する器具は利用できない事になります。しかし、こちらについてはあまり利用している人はいないので大きなデメリットではないかと思います。

まとめるとオール電化住宅のデメリットは

  • 調理器具についての制限がかかる
  • 光熱費が割高になる

になります。

オール電化住宅の是非

まとめを見てもらえばわかる通り、オール電化住宅のメリットは普段はすぐにわかりづらい「安全性」にあり、一方デメリットは普段すぐにわかる「コスト」「使い勝手」にある事がわかります。

いざというときのための出費としてオール電化には大きなメリットがあるのですが、わかりやすいデメリットがあるためにどうしても避けられてしまう傾向にあるわけです。

しかし、オール電化住宅が普及しない最大の問題はそもそもオール電化に対する「印象」や「固定概念」だと考えられます。

「なんとなくオール電化住宅は不便そう」
「原発問題とかで電気を使う事に抵抗がある」

そんな気分で第一印象で嫌っている方がほとんどです。

冷静に両者のメリットデメリットを検討して、自分の家をどうすべきかを判断すべきだと思います。

参考までに、かつてオール電化で10年以上暮し、現在はガス電気を利用して暮らしている筆者の個人的経験からですが「キッチンのコンロのみをIHコンロにし、ガスは給湯のみの利用にとどめる」のが一番合理的だと考えて実践しています。

これは

  • ガスを併用する事で、オール電化のデメリットである光熱費の上昇がなくなる。
  • 直接火を扱うコンロを排除する事で安全面を確保できる。
  • 災害時にはIHコンロが使えるため最低限の給湯が可能になる。

事から経験的に導き出した結論です。

しかし、安全面を考えれば中途半端な解決策であるのも確かで、徹底した安全を考えるなら、多少費用はかかってもやはりオール電化の方が有利なのは確かです。冷静な目で両者を比較し、家を購入する際やリフォームする際には検討してみてください。

まとめ

余談ですが、前段で紹介した80年代の先進的高級マンションについては、昨今の量産型マンションと比較してもなお設計面で優秀な物件も多く、単純な築年数だけでは語れない魅力ある物件が多くあります。

これらの物件をリフォームする事で最新のマンション以上にすぐれた居住環境を安い費用で獲得する事も十分可能ですので、単純に築年数のみで避けるような事はせず、現物を確認する事をお勧めいたします。

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